思っていたのと 違うのですか‼︎

香りを堪能して、もう一口。
「ふぅ」と自然と息が漏れる。

「FORTNUM&MASON の アッサム スパーブです。コーヒーよりも紅茶の方がお好きかと思い、こちらに致しました。」

 もしかして、前回会った時に紅茶を飲んでいたからのチョイスですか?

さすが第一秘書さん。出来る男は違いますね。

「行きたい所は決めたのか?」

 行きたい所とは?

お茶請けに置いてあったビスケットを口にしながら、首を傾げる。

「その様子だと、考えてもいなかったようだな」

あっ!そうだ。

出張が終わると「ゆっくり出来るから、どこか行きたい所を考えておけ」という指令がありました。
ちゃんと覚えています。

「どれぐらいゆっくり出来るかお伝えしていないのですから、仕方がないのではありませんか?」

ナイスフォローです、第一秘書さん。

「伝える為に連絡を入れたのに、出ないのは俺のせいか?」

はい、悪いのは私です、ごめんなさい。

「お時間もない事ですし、箱根の淡路さんに行かれたらいかがですか?」

箱根?淡路?知ってます。超高級旅館ですよね。ふらっと行ける所ではないと思いますよ。

「今から行けば、ゆっくり出来るか。」

今から?なにも準備してませんけど‼︎

「箱根でしたら、お送りしますよ。」
「いや、俺が運転する。お前は、残れ。」
「ハイ、ハイ。畏まりました。お戻りの時間には、ご連絡いたしますので、ごゆっくりお過ごし下さい。」

 勝手に話を進めないで下さい!
いきなり二人っきりなんて!無理です!

「エントランスにお車を回して置きますね」

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