思っていたのと 違うのですか‼︎
「まだ間に合うだろうか?」と洋館を見ながら言う旦那様。
「大丈夫ですよ」と答える女将さん。
「では、お席をご用意しますね」
と未だ旦那様の腕に巻きつく着物の彼女に
「沙耶(サヤ)、板さんに飛びっきり美味しい物をご用意する様にお伝えして」
とにっこりと笑いながら言う。
笑っているけど、かなり怒ってますねよ。
沙耶さんが凍りついてますよ。
「沙耶さん」と一喝。
動きを取り戻した沙耶さんは、女将さんを怯えた目で見ながら「わかりました」と旦那様の腕を離すと、私を睨む。
それに気付いた女将さんが「沙耶」ともう一喝。怖いです。
頭を下げ、小走りで洋館に向かう沙耶さん。
沙耶さんが動き出したのを確認すると「申し訳ありません」深々と頭を下げられる。
「気にするな」と真後ろから声がする。
振り向くと旦那様がいた。
あなたは気にして下さい。と言いたかったけど、「それよりも腹が減った。」詫びに美味しい物を食べさせろと言わんばかりの旦那様。
女将さんは、旦那様を見ながら苦笑いをしている。きっと私も同じ顔をしている。
旦那様には言っていない。
うん、その気持ちわかります。
これで丸く収めようとしているんですかね。仕方がない人です。
「行くぞ」と私の腰を抱きながら、歩き出す。
夫婦としてのエスコートとしては、完璧なんでしょうが、近いです!