思っていたのと 違うのですか‼︎

 テーブルの上に次々と運ばれてくる懐石料理に、舌鼓を打つ。

さすがに写真は撮れないので、心のカメラに収めていく。

お品書きだけはそっとカバンの中へ。

 最高級の旅館のお料理はやっぱり最高級。

美味しい物はお腹が空いてなくても、不思議と入ってしまう。

満足満足。
 
 絵心さえあれば、あの芸術のような料理達をスケッチしたのに。

記憶力には自信があるが、絵心は皆無。
絵心もやっぱり先天性に違いない。


 部屋に行くにも、すれ違うスタッフに気軽に挨拶をしながら、案内を付けずどんどんと進んで行く。

 どれだけここに通っているかがわかる。これだけいい所だ、連れて来られた女の子達はさぞ感激しただろう。

はぁ、せっかくの高級旅館。
写真を撮りまくりたい。

「・・・はどうする?」

「はい」ごめんなさい。
全く聞いておりませんでした。

 首を傾げる私に、旦那様は呆れたようで、小さくため息を吐くと

「いい。大浴場がまだ空いているから入って来い」と浴衣を私に押し付ける。

 「そこは一緒に行こう」ではないんですね。

「わかりました」と、浴衣を抱えながら、部屋を出る。

 通常、部屋で浴衣に着替えて行くものではなかったでしょうか?

 まぁ、いいです。

旦那様がいる所で着替えるなんてこと出来ないので、ちょうどよかったです。



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