思っていたのと 違うのですか‼︎

6-3



 なんとかターミナルに到着し、誰が来ているのだろうと辺りをキョロキョロする。

 見覚えのある車が一台。

タクシーの運転手さんと仲良く話す見覚えのある姿。

楽しそうです。割り込めない雰囲気です。

スマホを片手に[着いた]と連絡を入れた方がいいのでしょうか?と悩んでいると、旦那様と目が合う。
 
笑顔が消えた。
やっぱり怒ってらしゃる。

無言で近づいて来ると、私の荷物を持ち「行くぞ」と車へと歩き出す。

慌てて後を追う。


車の中でも、無言。

ゆっくりとはさせて頂きましたが、然程遅い時間ではないはず。

まだ怒ってらしゃるのかしらと旦那様を見れば、ため息を吐き視線を動かす事なく「楽しめたか?」と聞いて来た。

会話を求めてらっしゃるのですね。
わかりました。

「はい。旅館や湯本を散策して帰ろうかと思っていたのですが」

本当は早く帰ろうと思っていたんです!とアピールしつつ

「沙耶さんと大涌谷へ行って来ました」

小さく鼻で笑いながら「大涌谷?楽しいか?」と呟く旦那様。

何!大涌谷の楽しさがわからないなんて!

なんて残念な方でしょう。

「楽しかったです。初めてでしたし・・・」

反論したくても、上手く言えず声がどんどん小さくなっていく。

「初めて?」と驚きつつも「まぁ、お嬢様が行く所じゃないな」と一人納得している。
 
お嬢様とか関係なく、大涌谷どころか箱根も初めてでしたけどね。
家族で旅行なんてした事ありませんし。

心の中で補足したくても言葉にならない。

私は抱えていた鞄を強く抱き締める。

隣から旦那様のため息が聞こえる。

呆れられた。

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