思っていたのと 違うのですか‼︎
7-2
手を振ろうと胸の前に小さく手を上げた。
その瞬間、手首を掴まれ引き寄せられる。
瞬間の出来事で、動作が遅れる。
誰!と顔を見ると、眉間に皺を寄せた旦那様が立っていた。
突然の出来事に驚いた息子さんが、一歩前に出た。
息子さんと旦那様の間に入り
「大丈夫です。お時間も御座いませんので、こちらの事は心配しないで下さい」
旦那様に手首を掴まれたままだが、なんとか体勢を整えて、息子さんを送り出す。
「だが」
「大丈夫です」
「何かあったら、すぐに連絡してきなさい」
「ありがとうございます」
立場上見過ごす事は出来ない様だったが、今は私の為に時間を割いている訳にはいかない。
息子さんは渋々とタクシーで立ち去った。
出発したのを見送ると、旦那様の方を向き「おかえりなさいませ」と頭を下げる。
その間も手は離してくれなかった。
「誰だ」
「進藤(シンドウ)さんは私のご友人の息子さんですが?」
かなり御冠の様子です。
何か問題でもあるのでしょうか?
首を傾げると、旦那様の後ろに、第一秘書さんと、秘書愛人さんが見えた。
静かに怒る第一秘書さん、何があったが存じませんが、やっぱり怖いです。
私を軽蔑する目で見る秘書愛人さん。口角が上がってますよ。
旦那様を誘導してきたのはあなたですか?
面倒な事に巻き込まないで頂きたい。怒りたいのは私の方です。
「帰るぞ」
レジデンスに向かって歩き出す。
手首を掴んだままなんですが!
腕が伸びていくにつれ、引っ張られる感覚が強くなっていく。
痛いんですが!