思っていたのと 違うのですか‼︎


「だ (旦那様)?」
と声をかけようとした瞬間、視界が閉ざされ闇が私を包む。
何事かと思うが、唇に触れる。
キスされた?なんで?
と思い、旦那様から離れようと手で押しても旦那様はびくともしない。
その間に、口の中に今まで口に入れた事のない何かが入ってくる。
驚き目を見開くと、旦那様と目が合う。なんて顔をしているんだ。
「智だ」と言うと顔を近づけて来る。
 
ちょっと待って‼︎
旦那様と呼ぼうとした瞬間に、チュっと音を立ててキスをする。

なんなんだ!これは名前を呼べと言う事何か?

覚悟を決め「智さん」と呼んでみる。

なんて幸せそうな顔をするんだ。どういう流れでこうなった?さっきまであんなに怒っていたではないか?なんだか恥ずかしくなり下を向く。

「良い子だ」

私の頬に手を当てているかと思えば、優しく顔を上に向けさせる。
自ずと口が開いているのが自分でもわかる。
口を開けながら智さんの顔が近づいて来る。

食べられる。
恥ずかしすぎて顔を背けたかったけど、智さんの手が、顔がそれを阻止する。

 また口の中に何かが入ってくる。口内を優しく撫でる様に。
 私の舌を探りあて、絡めてくる。

フワッと浮き上がる浮遊感を感じた。足が浮いている。智さんの顔が私の下にある。

宙に浮いている不安定さなのか、今まで体験した事への恐怖なのか、智さんにしがみつく。

大丈夫だよ

頭を優しく撫でながら、耳元で甘い声が囁く。
体がゾクっとする。恐怖感ではない、何かを感じる。
 耳がくすぐったい。振り払いたいが、手を離したら落ちてしまうと思うと、手を出す事が出来なかった。

 水音が大きくなる。

ゆっくりと大切な物を扱う様に、柔らかい場所へと下される。

浮遊感から解放されたが、智さんからは解放してくれない様だ。

「や、やめて」
なんとか声を発してはみたが、耳元で「大丈夫」「怖がらなくていい」と甘い声で囁かれる。

< 55 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop