思っていたのと 違うのですか‼︎
第2章
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私の名前は 葉山 健(ハヤマ タケル)
スドウグループ次期代表 現専務取締役 須藤 智(スドウ アキラ)の秘書をしている。
智とは、昔馴染みで中学の頃からの知り合い。
だが、一方は日本を代表する御曹司。
いつも誰かに囲まれている男と一人静かに過ごす事の多かった私では住む世界が違った様に感じだ。
それがなぜこうなったのか?
きっかけすら覚えていない。気が付けば、いつも一緒の時間を過ごしていた。
「これって、こうした方が」「あれって必要ないよな」
誰もが、大した事はないが不便に感じていた事を意図も簡単に改革していく。
「これぐらい出来なきゃ、後を継ぐなんて言えないだろ」
飄々とこなしているように思えた男は、将来を見据え常に努力をしていた。
ただ今の現状に不満を持ちながらも、何もしていない自分が恥ずかしくなった。
智の手伝いをしているうちに、世界が広がっていくのを感じた私は、自分にその力がなくても智の力になりたいと思うようになっていた。
そして、気がつけばそれを生業にしていた。
忙しく動き回る智の手となり足となる生活が一変したのは、突然の事だった。
「結婚する」
驚いた私は、持っていたコーヒーを溢しそうになる。
「誰が?」
つい本音が出る。
差し出したコーヒーを一口飲むと「俺」と私の方を見た。
「母さんに連絡して、日程調節をしてくれ」
視線はすぐに書類に戻っていた。
仕事を頼むかの様な口調で淡々という智。
「相手は?」
「山野の娘だ」
あぁ、これも仕事の一環か。
そう感じた。
だから、向こうが指定した時間だけを開けた。
1年先の予定までいっぱいにも関わらず、無理やり空けたのだから、恨まないで欲しい。
式の最中に目が合う生贄の花嫁に、心の中で合掌した。