思っていたのと 違うのですか‼︎


「待ち人からの連絡は来ましたか?」

眉間に皺を寄せながら、睨まなくても

「うるさい」

街を歩けば今まで寄る事のない女性物の店に足を止め、手に取る事のないお土産になりそうな物を買い求める。

手ぶらいで行き、業績を土産に帰る男の荷物が次から次へと増えていく。


「程々にして下さいね」

苦言を呈すれば

「帰ったら1週間程度休みが取れないかなぁ?」

スマホを片手に呟く。

智と共に行動する様になって、1番驚いた出来事だった。

どんなに詰めても文句を言わず、むしろ更に予定を入れてくる仕事優先男が「休みたい」。

「はぁ?」本音が漏れる。

「言ってみただけだ」スマホを額に当て項垂れる智。

苦笑いする。

「このままの予定では、帰っても一晩程しかお時間が取れません」

ソファの背にもたれかかり、天を仰ぐ。

「なので。予定を早めさせて頂き、早めた時間分お休みに当てられたらいかがですか?」

ハードスケジュールになるかもしれませんが

と付け足そうとしたが、智は「詰めれるだけ詰めろ」と起き上がり。

書類を手に仕事を始める。

そこには私が知っている完全完璧な男ではなく、一刻も早く帰りたいと願う恋する男の姿があった。

智も人だったか。

なんだが、残念な様なホッとした様な。

スケジュール調節をしながら、苦笑いが漏れる。

< 61 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop