思っていたのと 違うのですか‼︎


なんとか1日の休日を確保して帰宅する。

荷物持ちに付き合えば、コンシェルジュに呼び止められた。

奥様は入居して、一度も外出していない。コンシェルジュとしては、踏み入り過ぎな事は重々承知だが、体調を崩されていないか心配だ。

との事だった。

それを聞いた智は足早に部屋に急ぐ。


ドアを開けた瞬間、正座でスマホを掲げる奥様の姿が。

「生きていたか」
「生きております。おかえりなさいませ」

深々と床に頭を付け土下座する奥様。

ぐちぐちと文句を言う智。

辺りを見回せば、一区間だけ使用感がある。

新婚早々取り残された奥様の為に、寝る間も惜しんで仕事を片付け帰宅したにも関わらず、
当の奥様は智がいない間、十分に満喫していた様子。

「頭を下げるな。下げられると、悪者になった気分だ。」


 テーブルにティーカップを置きながら、「こちらにどうぞ」と言えば、ビクビクしながらとソファに座る。

 様子を伺う様な動き。まるで小動物だ。


「誰がどう見ても、智様が悪いと思いますよ」

私が言えば、小さく頷き

「どこがだ。心配して連絡を入れているのに、返事がない事に対し、大人としてというより人としてどうなんだ?」

智が言えば項垂れる。

きっと本人は微動だにしていないつもりなのだろう。細々した動きに感情がダダ漏れだ。

常に損得の駆け引きの世界に身を置き、外見や地位だけが目的に近寄ってくる人達(男女)に囲まれている智にとっては、新鮮に映るっているのだろうか?

だが、腐っても葉山の娘。
これが計算ではないとは言い切れないな。

そんな歪んだ思考になる自分が笑える。

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