思っていたのと 違うのですか‼︎


坂本は自分の首にぶら下がっている社員証に気付き「あっ」と声を漏らす。

そして「はい」と小さく返事をした。

「でも、これ根津に頼んだ物だよね。なんで君が?」

坂本の顔を真っ直ぐに見た。

怒っているわけではないんだ。
とても良く出来ているものでね。

また表情を硬くする坂本に問いかける。

実際は怒ってますけどね。

今まで根津が提出していた書類と同じ完成度なんですから。

「ね、根津さん。いつも忙しいようで。負担を少しでも減らす為にお手伝いをさせて頂いていて。」
「でも、坂本さんは根津のアシスタントではないですよね」

根津にそう言えと言われたのか、突っ込まれた時の言い訳を自ら考えてきたのか。

「そうなんですが・・・あっ、今暇なんです、私。なので、少しでもお手伝い出来ないかと根津さんに手伝いますと声を掛けました」
「そうなんですか」
「そうなんです」


「では、今暇なんですね。では、ここでこの続きをお願いします」

笑顔で席を坂本に譲る。

「総務の方には私から伝えておきます。暇なんですよね」

「えっ」「いや」と口実でも考えているのですか?

逃がしませんよ。

「少し席を外します。扉は開けたままにしておきますね」

逃げたら、どうなるかわかっていますよね。

笑顔で「では、よろしくお願いします」と坂本を残し、総務へと向かった。


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