思っていたのと 違うのですか‼︎
「根津が仕事を回しているなんて、報告を受けてないんだが」
「上げてないもん」
平然と言って退ける。
いい年したおっさんが「もん」って。
眉間に皺を寄せると、私の肩に手を乗せる。
「比較的女性の多い部署は、色々あるんだよ。仕事に支障が来たせば介入する。だが、来さなければ問題ないと判断している。
もちろん、ある程度は把握しているし、声もかけてる。なら、問題ない。
上に報告するまでもない問題となるわけだ」
トップが絶大なる信頼を置く総務部部長・斉藤があっけらかんと言ってのける。
「それに坂本は使えるだろ」
私が小さく笑いながら、斉藤の顔を見れば、ニヤッと笑いながら肩を叩く。
「そうですね。このまま私の下に欲しいぐらいです」
「坂本は秘書資格者だよ」
「このまま頂いても?」
「そっちは問題ないがこっちは困るが、今日は特別」
「では、近いうちにお願いにあがります」
デスクに戻ると背伸びをする坂本がいた。
「終わりましたか?」と声を掛ければ、「はい」と立ちあがろうとする。
「では、これもお願いします」
坂本の横にドンっと書類を置く。
「えっ」「でも」「そろそろ」
「私一人で困っていたんです。助かります。わからない点がありましたら、聞いてください」
困惑しながらも、書類に手を伸ばしはじめた。
こうしてもいいか、あれと一緒の方がわかりやすい、これは本当に必要なのだろうか
私に聞きに来る事が全てポイントを付いてくる。
仕事を押し付ける相手に坂本を選んだ事が唯一の根津の功績だな。
無駄なくドンドンと仕事をこなす坂本の姿を見ながら思う。
「この子が欲しい」