思っていたのと 違うのですか‼︎
フロアに降り立つと、周囲が騒つく。
「あの2人、奥様と一緒にいた人」
根津が隣の女に話掛ける。
「えっ」
「修羅場」
「っていうか、雰囲気ヤバくない」
「あっ!久しぶり!相変わらずガラが悪いな」
騒めきの中、少し離れたところから、斉藤が手を上げながらこちらに近づいて来る。
「うるさい」
部長とグータッチを交わす。
「どこの組の人間が殴り込みに来たかと思ったよ」
「こんな好青年捕まえて、何言ってる。ついにボケたか?」
知り合いなんですね。相変わらず顔が広い事で。
眉間に手を当てる。
「早かったですね」
顔を上げると智が立っていた。
「お前に聞きたい事があってな」
「奇遇です。私も翔(カケル)さんに聞きたい事があるです」
シュールな光景だと思った。
我が社の重鎮とも言える総務部部長の斉藤と笑顔で談笑していたかと思えば、近い将来トップに立つ予定の智が謙る。
何者なんだと他の社員が騒めく。