思っていたのと 違うのですか‼︎
「山野のお嬢さんが【山神 サト】‼︎」
本に興味がない人間でも一度は聞いた事のある作家の名前に社が騒めく。
日本を代表するミステリー作家 山神 サト。
彗星の如く現れた作家で、正体不明。
本格ミステリーから、サイコサスペンスまで書き上げる新進気鋭のベストセラー作家。
「この前新作買ったばっかり」
「今度カイ君主演で映画やるの原作者だよ」
「佐藤さんも読まれたんですか!」
外野のトーンも上がる。
「よし。ここは任せろ。迎えに行って、土下座して謝って来い」
斉藤が智の肩に手を乗せる。
「ちなみに私はデビュー作から初版で買っている自他共に認める山神マニアだ。サイン本が欲しい。握手がしたい」
部長、己の欲望に正直ですね。
「微力ながら、私も手伝いますので、サインが欲しいです」
「私も」
次々に手が上がる。
大人気ですね。
「山神先生なら、亀塚公園かと」
声が発する方を皆が一斉に向くと、そこには坂本が立っていた。
「何故そう思う」
智が問えば
「何かあった時は階段をひたすら登ると以前仰っていました」
「辛くて長い階段を登り切ると、問題も乗り切れる気がする。だったかな?」
「はい。長くて急な階段がいい。登り切った先に公園や神社があるのがいいと。池上本門寺、日枝神社、愛宕神社の階段も長かったり、急だったりしますが、両方を考えると都内では亀塚公園の坂が濃厚かと」
「さすが、詳しいね」斉藤が感心をする。
「私も山神マニアなので」と斉藤を見て言った後、智を見て「わ、私もサイン本が」オズオズと手を上げる。