思っていたのと 違うのですか‼︎
言われるがまま着せ替え人形と化した私は、鏡の前で立ち尽くしていた。
ストレートビスチェでハイウエストだけど、シンプルなデザイン。
綺麗な淡い水色のフレアドレスで、胸元の黒生地がいいアクセントになっている。
そして、これもまた良い生地。
絶対に高いヤツです。
どこのブランドか確認しようとしても、
「これを履いて下さい」
「セットしますので動かないで下さい」
「こちらをお付けしますね」
と、言われるがまま。
「それではしばらくお待ちください」
と解放されたは良いが、少し小腹に入れたくとも、喉を潤いたくとも、なんだか怖くて動けないでいる。
鏡の中の自分が自分ではないようだ。
鏡の前でスカートを遊ばせてみる。
このスカートもフワフワしていてかわいい。
「着替えたか?」
見るからに上質なスーツに身を包んだ智さんが入り口に立っていた。
スカートで遊んだのを見られた!
力が入る。
「はい」と俯きながら返事をすれば、満足そうに「そうか」と呟き、「準備が出来たら、行くぞ」の声が聞こえた。
この状況は2回目だ。
なんか言ってよ!
と顔を上げれば、今度は立ち去らず、私を見ていた。
目が合えば、手を差し出してくれた。
智さんの元へ歩き出せば、いつも以上に高さと細さに不安定になる。
すぐに私の手を取り支えてくれた。
「似合ってる」
と耳元で囁かれた。
自然に腕を軽くクロスして、ゆっくりと歩き出した。
おぉ、歩きやすい。というか、腕から離れた瞬間倒れそうだ。