猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
「はぁ~、美味しかったですね!」

「ええ」

大満足でパンケーキを食べ終えた私達は、お店を出て帰路についている。

「良かったですね、紅茶が買えて」

三毛さんが手に持っている袋を指さして言った。

「はい」

言われた三毛さんがにっこり笑う。

あのお店はお店で出している紅茶の茶葉をいくつか買える様にレジ横に置いてあって、それを見付けた三毛さんが全種類を買っていた。

「あと、結局ご馳走してもらってすみません。お礼をするのは私だったのに」

「いえいえ、お誘いしたのは僕ですから、当然ですよ」

「ホント、ありがとうございます」

私は頭を下げた。

本当は、あの夜(赤信号を渡ろうとして止められた夜)のお詫びとお礼を兼ねていたのだから私がお金を出すつもりでいたのに、三毛さんがガンとして譲ってくれなかった。

(今度、何かお詫びの品を買ってお店に届けよう)

何もしないのは私の気が治まらないから、三毛さんには内緒でなにかプレゼントを渡そうと心に決めた。

「この後、どうしますか?実森さん、お時間大丈夫ですか?」

三毛さんが時間を確認して私に聞いて来た。つられて私も確認すると、まだ15時をちょっと回ったくらい。

私としてはもっと三毛さんと一緒に居たいけど、三毛さんは嫌じゃないのかな?

「あ、私は今日はなんにも予定が入っていないので……三毛さんは大丈夫なんですか?」

恐る恐る尋ねてみると、三毛さんがニコッと笑って、

「僕も今日は何も予定がありませんので、実森さんが良ければちょっと付き合ってもらいたい所があるんですが……」

と言った。私は咄嗟に、

「行きます!どこでもお供いたします!」

と鼻息荒く叫んでいた。

「あ、ありがとうございます」

私の鼻息の荒さに、三毛さんがちょっとのけ反る。

「あ、ごめんなさい。ちょっと興奮し過ぎちゃって……」

三毛さんの顔がちょっと引きつっていたので、私は慌てて三毛さんから少し距離(心の)を取った。

「あの、もしかしたら気分を害されるかもしれないのですが、付いて来て頂いても良いですか……?」

「え?」

気分を害する?ちょっと言っている意味が分からなくて、三毛さんの顔を見上げた。その表情は少し強張っている。

「どうかし……」

「行きましょうか」

三毛さんは、私の言葉を遮ってそれ以上何も言わずに歩き出した。

私は「あ、待って下さい!」と慌てて付いて行く。

(どこに行くんだろう??)

さっきまではあんなに楽しそうだったのに、急に黙ってしまった三毛さんを横目で見ると、少し震えている気がした。

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