猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
この場所に来るのに、どんなに勇気を振り絞ったんだろう。それでも、こんなに体を震わせてまでもここに私を連れて来たかったんだろうか?

(もしかして、ちょっとは心を開いてくれているって解釈で良いのかな?)

私は、俯いて丁度良い高さになっていた三毛さんの頭をポンポンと撫でた。

「……大丈夫です。三毛さんは頑張りました。結子さんも喜んでますよ」

その言葉に、三毛さんがゆっくり顔を上げる。

「そう、ですか……?」

「はい、絶対そうです。私が保証します」

根拠なんて何もないけど、私は自信満々に頷く。

それを見た三毛さんが、ふふっと笑った。

「さっきもそうだったんですが、実森さんに『絶対』って言われると本当にそうだと思えて来ますね」

「はい。私、勘は良い方なので」

これまた根拠はないけど、自信満々に頷いておいた。何よりも、三毛さんに安心して欲しかったから。

私の言葉だけで救われるなんて傲慢かもしれないけど、それでも三毛さんには笑っていて欲しかった。

「……ありがとうございます。今日、ここに来られて本当に良かったです」

やっと落ち着きを取り戻した三毛さん。震えも止まり顔色も良くなってなんだか清々しい顔をしている。

「良かったですね」

「はい。……では、行きましょうか」

「はい。あ……」

「どうかしましたか?」

「あの、私も手を合わせても?」

私の言葉に少々面食らった三毛さんだったけど、すぐに満面の笑みを浮かべ「もちろんです」と言った。

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