猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
第三章
「いらっしゃいませー!」

「おっ、実森ちゃん、今日も元気が良いね」

「金さん、こんにちは!はい、元気だけが取り柄ですから!」

「ははは、良い事だ。あ、いつものね」

「はーい!三毛さん、金さんにいつものお願いします!」

「はい。かしこまりました」

三毛さんがニコッと微笑んで「金さん、いらっしゃいませ」と声を掛けると、金さんが「おー」と返事をして、いつもの窓際の日当たりの良い席向かう。

一番日当たりの良い席はアールの指定席だから、金さんはその後ろのテーブル席へ。座る前にアールをひと撫ですると、アールは頭を持ち上げてニャーと鳴いた。

金さんが座ったのを確認して、私はお冷を金さんの前に置く。

「もう少々お待ちくださいね」

「はいよ」

金さんが持って来たスポーツ新聞をバサッと広げ始めたので、私は撤退する。

これは、金さんの休日のルーティン。

日当たりの良い席でスポーツ新聞を読みながら三毛さんの作ったサンドウィッチを食べて紅茶を飲むのが至福なんだそうだ。

(私も以前はそうだったから分かるよ)

うんうん、と頷く。

最近まで金さんと同じ事をしていたのに、今はなんだか懐かしく感じる。

あれ……?って思ってる??

なんで金さんの注文を聞いて接客してるの?って思ってるでしょ?

ふふふ。それはね、実は最近お店を手伝っているんだ。

アルバイトの生田さん(未亡人)がいるのになんでかって?

うん。その生田さんが問題でね。

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