猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
多分、なかなか帰って来ない私が結子さんと同じになっていないか不安で心配だったんだと思う。

これは、確実に私が悪い。

(悪い事したな……)

連絡を入れなかった事を激しく後悔。

流石にここまでとは思っていなかったから。

(あ……)

まだ落ち着かないでいる三毛さんを見たら、汗がすごかった。

それを見て、私はカバンをごそごそと漁りハンカチを手渡す。

「どうぞ」

「え?」

「汗。すごいですよ。そのままにしたら冷えてしまいます。使って下さい」

「でも、汚れてしまいますよ」

「そんな事、気にしないで下さい」

受け取るのを渋る三毛さんに、はい、と再度差し出すと、「ありがとうございます」と言ってハンカチを受け取ろうとした。

けど、取り損ねてしまって道路にハンカチが落ちそうになる。

「あっ……!」

三毛さんが慌てて手を出したけど、先に私が落ちる寸での所でハンカチをキャッチし、そのままハンカチごと三毛さんの手をギュッと握った。

私は、やっぱり……と思った。

三毛さんの手は、微かに震えている。そのせいで、ハンカチを上手く受け取れなかったんだろう。

「み、実森さん……?」

「ごめんなさい。心配かけちゃって。連絡入れれば良かったですね」

私は三毛さんの震えが止まった事を確認し、ゆっくりと手を離した。

「あ、ありがとうございます。いえ、僕もちょっと取り乱しました。怒鳴ってしまってすみません」

三毛さんは悪くないのに、申し訳ないと何度も口にする。

「三毛さんは悪くないです。私の気が回らなかったせいです。スーパーでキレイな花が売っているのを見たら、結子さんにとっても似合うなと思って、それで……」

私がそう言うと、三毛さんは足元に視線を落とし、供えてある花を見て「あ……」と言う表情を見せた。

「そう、だったんですか……。ありがとうございます。結子さんも喜んでいると思います」

「いえいえ……」

その後は、なんだか気まずい空気が流れて二人で黙ってしまった。


ゴロゴロゴロ――……。


「え?」

二人で空を見上げる。

さっきまで晴れていたのに、急に空には雨雲が掛かり雷も鳴り始めた。

これは一雨来そうだ。

「帰りますか」

「はい」

「荷物、持ちますよ」

「あ、ありがとうございます」

三毛さんに買い物袋を渡す。

「あ……」

雨粒が、手に当たった。

――と思った瞬間、バケツをひっくり返した様な雨が降り始めた。

「急ぎましょう!」

「はい!」

多分、急いでも間に合いそうにないけど、私達はmilk teaへと走った。
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