猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
「実森さん」

「はい?」

不意に名前を呼ばれて顔を上げると、三毛さんの顔が物凄く近くにあって驚いた。

「三毛さ――」

避ける隙も与えられず、本当に突然で一瞬の出来事。

三毛さんの唇が、私の唇に重なる。

(……は?)

え?なにこれ??

今、自分が置かれいている状況を理解するのに、たっぷり10秒は掛かったと思う。

(え?私、三毛さんとキスしてる?……えええええっ!?)

これはパニックどころの話ではない。もう意味が分からなくて、頭が付いて行けない。正直、どうしてそうなったのか分からない。どこをどうやったらこんな流れになったのか。

(でも……)

そんな事がどうでも良いくらい、嬉しい事には違いなかった。

(これって、両想いって事で良いのかな……)

だとしたら、凄く幸せなんだけど。

ゆっくり、三毛さんの唇が離れる。

私達はなにも言わずに見つめ合い、もう一度唇を合わせようと顔を近付けたその時――。

突然、『パァンッ――!』と何かが割れる音がして、二人ともビクッ!と体を震わせる。

「な、なんですか?」

「……ちょっと見て来ますね」

三毛さんが音のしたキッチンの方へと向かう。

キッチンに入った瞬間、三毛さんの動きがピタッと止まった。

そのまま俯き、身体を硬直させたまま動かない。

「みけ…さん……?」

どうしたのだろう?

そう思って三毛さんの側へ寄る。
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