猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
でもそれよりも私はあの時、想いが通じ合ったと思ってすごく嬉しかった。三毛さんも、私と同じ気持ちだと思った。

(だって、じゃなきゃキスなんてしないよね)

ぼんやりとあのまま写真立てが倒れて来なかったら今頃私と三毛さんは……と考え、顔が熱くなり悶えた。

そして、ハッとする。

(もしかして三毛さん、あんな事をしたから結子さんが怒って写真立てを倒した、とか思ってるんじゃ……?)

そう考えると、全て納得が行く。

余程不安定な場所に置いていなけれれば、写真立てが一人でに落ちる事ってそうそうない。棚の(きわ)っきわに置いていたならいざ知らず、三毛さんが大事な結子さんをそんな危ない所に置くはずがないし、今朝私が見た時もちゃんと棚の奥にスペースを作って綺麗に飾って置いてあった。

(確実になんらかの力が加わらないと倒れない位置にあった事は確かだよね。だとしたら、結子さんが本当に怒って……?)

でも、あの交差点で聞こえた声はそんな風には聞こえなかった。とても優しくて穏やかで、慈愛に満ちた声だった。

本当に、三毛さんに前を向いて生きて欲しい。そんな想いが伝わる声だったけど……。

それとも、実際に目の当たりにするのとは違うんだろうか?
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