猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
(あれ?ここ、どこ……?)

私は今まで見た事のない場所に立っていた。

空は晴れ渡り、周り一面に色とりどりの花が咲き誇って絨毯《じゅうたん》の様になっている。

メルヘンな童話の世界にでも迷い込んでしまったのだろうか?

(キレイだな……)

明かりが差し込み、太陽の光りではない気がするけど心地好い暖かさ。

ん~?とグルッと見回し後ろを振り向くと、そこにはどこかで見た事のある女性が微笑んで立っていた。

私は、なんの迷いも躊躇(ちゅうちょ)も不信感も抱く事なくその女性に話し掛ける。

(あの、ここ、どこだか分かりますか?……それと、どこかでお会いしてませんか?)

そう尋ねるとその女性はニコッと笑って、

「初めまして、三毛伸一郎の妻の三毛結子です」

と、言った。

(あ、そうなんで……え!?三毛さんの奥さん!?)

「はい」

もう一度優しく微笑むこの人を見て、いつも見ていた写真の中で微笑んでいる結子さんと合致した。

(は、初めまして!藤堂実森と申します!あの、三毛さんには大変お世話になっておりまして――)

ここはちゃんと挨拶をしておかねば!と私は慌ててお辞儀をした。

「ふふ。知ってます。ここから色々見てましたから」

(あ、そうなんですか、色々……)

結子さんの言葉に、ガバッ!と顔を上げる。

(色々って、もしかして……)

じゃあ、昨夜の事も……?

「もちろん」

(!?)

私が何の事を言っているのか素早く察知したみたいで、結子さんは「全部ね♡」とにっこり笑った。
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