猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
「……あ、もう時間ね。そろそろ目を覚ましなさい。伸ちゃんが泣いてるわ」

(え……)

その時、ザァッ!と強い風が吹き抜け、花びらを巻き散らす。

(わっ!!)

一瞬だけ通り抜けた強風。

(……凄い風でしたね。結子さん、大丈夫ですか?)

結子さんの方を見ると、今まであったはずの結子さんの姿は無かった。

(あれ?結子さん……?)

辺りを見回すと、ここに立っているのは私一人。

(結子さーん!)

呼んでみても、私の声が木霊するだけ。

どこに行ったんだろう?

『み……り…ん……みも……さ……』

(え?)

何処かからか、私の名前を呼ぶ声がする。

(この声……三毛さん?)

どうやら、名前を呼んでいるのは三毛さんの様だ。

(あ、さっき結子さん、三毛さんが泣いてるって言ってたっけ。早く戻らないと……)

でも、どうやってここから現実に戻れば良いんだろう?

そう思った瞬間、目の前が光りに包まれ、身体が宙に浮いた様にフワフワする。

(あ……)

これで三毛さんの涙が止まるかな……なんて思いながら、私はその光りに身を任せた。

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