猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
「夢を見たんです。その夢の中で、結子さんに会いました。その時に聞いたんです。結子さん、三毛さんに幸せになって欲しいって言ってました。私に、ちょっとヘタレな所もあるけど宜しくって……幸せにしてあげてくれって、言ってくれましたよ」

結子さんに言われた事を、そのまま伝える。

それが良い気がしたから。

少しの沈黙のあと、三毛さんがボソッと呟く。

「……結子さんは」

「え?」

「結子さんは……笑っていました、か……?」

そう言った三毛さんの声が微かに震えている。

「……はい。笑ってましたよ。とてもキレイな、太陽にも負けない笑顔で……」

そう伝えると、三毛さんの瞳から一筋の涙が零れた。

「……ぅ……っ……」

そっとその涙を拭ってあげる。

頬を撫でた私の手に、三毛さんの手が覆い被さる。

私の手を握り締めた三毛さんは、少しの間、泣いた。


******


ようやく三毛さんの涙が止まり、真摯《しんし》な目が向けられる。

「実森さん。僕は、実森さんの事が好きです。前に進もうと思えたのも、実森さんが側にいてくれたからなんです。これからも、僕の側にいてくれませんか?」

手に込められる力が強くなる。

不安そうに揺れる、三毛さんの瞳。

そんなに不安にならなくても大丈夫だよ。

私の答えは、決まってるから。

「私も、三毛さんの事が好きです。ずっと、側にいさせて下さい」

そう答えた瞬間、三毛さんの目が見開き、布団ごと抱き締められた。

「わっ!?」

「ああっ、どうしよう!凄く嬉しいです!」

ギュゥゥゥゥゥッと腕に力が込められ、少し痛い。

三毛さん、私、熱があるんですよー?

でも私も凄く嬉しいから、三毛さんの背中に手を回して負けない位強い力で抱き着いた。

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