猫と笑顔とミルクティー~あの雨の日に~
しばらくそのまま抱き合っていたけど、あ、そうだ。と思った事を三毛さんに言ってみた。

「三毛さん」

「はい?」

「生田さんと、キスしてましたよね?」

「え!?」

私の言葉に、ガバッ!と身体が離れる。

「あれは違います!唇には触れてません!ギリギリで避けて、頬をかすめただけです!」

本当はしていないって事は分かってるし、結子さんから怒らないでって言われたけど、あの時は凄くショックで腹が立ったから少しからかってやれ。

「……本当……?」

私は目を細めて疑いの目を向ける。

「本当です!!嘘なんて付いてませんっ!」

飛んで行きそうな勢いで首を縦に振る。

泣きそうな目をして一生懸命否定する姿がなんだか可愛くて、プッ!と吹き出した。

「ごめんなさい。ちょっとやり過ぎました。してないの、知ってます。それも結子さんに聞きましたから」

「そ、そうなんですか!?」

「はい」

そう言ったら、三毛さんが「良かった……」と安堵のため息を吐いた。

でも、頬をかすめただけでもちょっとモヤモヤしてしまう。

それにあの時、生田さんは私の存在に気付いていてあんな事をした。

目が合った時のあの笑顔。

思い出して、やっぱり腹が立った。

あんな人に頬とは言え触れられたと思うと、どんどん嫌な気持ちになって行く。

私って、こんなに嫉妬深かったっけ?

「……キス、したいな……」

ボソッと呟いた。

言葉にするつもりはなかったのに、咄嗟に声に出てしまった。

「え!?」

三毛さんの驚いた顔を見て私はハッと口を押える。

「いやあの、なんでもないです!気にしないで下さい!」

私は火を噴いている顔を両手で隠した。

何を言っているんだ私!そんな事したら三毛さんに風邪が移るじゃないか!いや、そんな事より何より、普通に恥かしい!!

うぅ~っ!と一人で悶えていると、急にギシッ……とベッドがヘコむ感覚がして顔を上げた。

「え――?」

三毛さんの顔が目の前にある。

どんどん近くなる距離に、私は「わ~!」と叫んで手で三毛さんの顔を押さえた。

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