貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
わざとかしこまったように言うジェシカに、フェルナンが逆におどけてみせる。
「二曲ちゃんと踊ったら、お目当ての……」
「スイーツ!!」
ちょうどフェルナンがぐっと彼女の腰を抱き寄せたタイミングで、ジェシカがここ一番の満面の笑みを見せたものだから、周りは一気にざわついた。
ジェシカの笑みに優しく笑いかけるフェルナン。やはり二人はいい仲なのかと、落胆の色が広がっていく。
そしてそのまま続けて二曲目を踊り出す二人に、周囲は答えを確信していった。
彼はよほど、ジェシカを気に入っているのだろう。二人は婚約関係にあるのかもしれないと。
間違いなくジェシカは気付いていないが、現実に二人は二曲連続で踊っているのだ。周りの受けとめは一致した。
肩を落とす令息達をしり目に、フェルナンは大人の余裕でジェシカをリードしていった。
「よし。ちゃんと果たせたんじゃないか?」
冗談口調で言うフェルナンにジェシカも倣って、同じ口調で言う。
「ええ。十分すぎるぐらいにちゃんと踊ったわ。父に報告しないと」
「ああ。一緒に行くよ。ロジアン夫人にも声をかけよう」
〝いいわね〟とはしゃぐ娘を優しく見守るフェルナンの様子に、マーカスはなんとも言えない気持ちになっていた。
二人はどういう関係なのか……。
聞きたいけれど、聞けそうにないような。
もちろん、フェルナン側も何も言わない。
「……ということで、お父様。約束通り、ちゃんと踊ってきたわ」
確かに〝ちゃんと〟踊ってはきた。しかも二曲もだ。
だがしかし、そこには本来婿候補を探すという目的があったはずだ。そのために参加したはずなのだ。
二曲ちゃんと踊ったとはいえ、友人(だと思う)と続けて二曲では、目的は少しも達成されていない。マーカスには、それを指摘できそうにないけれど。
「あ、ああ。見ていたよ。だが、他の方とは……」
「お父様! この後フェルナン様とロジアン様と約束をしているの。待たせるわけにはいかないわ」
被せるように話すジェシカに、反対できるはずもない。その背後には、不敵な笑みを浮かべたフェルナンがいるのだから。
「そ、そうだな。それは失礼だ」
「お父上。私がちゃんと見ておきますので、大丈夫ですよ」
ジェシカには聞こえぬようにそっと伝えてくるフェルナンに、マーカスはもはやお願いするしかなかった。
「よろしくお願いいたします」
「ええ。帰る時にはお声がけください。積もる話もあるでしょうから」
フェルナンは、ちらりとマーカスの背後に視線を向けた。その視線の先には、まだいろいろと聞き出したいと燃えるマーカスの友人たちが控えている。
マーカスが、自分とジェシカの関係をどう語るのか。
フェルナンは含みのある笑みを残して、ジェシカを連れ去っていった。
「二曲ちゃんと踊ったら、お目当ての……」
「スイーツ!!」
ちょうどフェルナンがぐっと彼女の腰を抱き寄せたタイミングで、ジェシカがここ一番の満面の笑みを見せたものだから、周りは一気にざわついた。
ジェシカの笑みに優しく笑いかけるフェルナン。やはり二人はいい仲なのかと、落胆の色が広がっていく。
そしてそのまま続けて二曲目を踊り出す二人に、周囲は答えを確信していった。
彼はよほど、ジェシカを気に入っているのだろう。二人は婚約関係にあるのかもしれないと。
間違いなくジェシカは気付いていないが、現実に二人は二曲連続で踊っているのだ。周りの受けとめは一致した。
肩を落とす令息達をしり目に、フェルナンは大人の余裕でジェシカをリードしていった。
「よし。ちゃんと果たせたんじゃないか?」
冗談口調で言うフェルナンにジェシカも倣って、同じ口調で言う。
「ええ。十分すぎるぐらいにちゃんと踊ったわ。父に報告しないと」
「ああ。一緒に行くよ。ロジアン夫人にも声をかけよう」
〝いいわね〟とはしゃぐ娘を優しく見守るフェルナンの様子に、マーカスはなんとも言えない気持ちになっていた。
二人はどういう関係なのか……。
聞きたいけれど、聞けそうにないような。
もちろん、フェルナン側も何も言わない。
「……ということで、お父様。約束通り、ちゃんと踊ってきたわ」
確かに〝ちゃんと〟踊ってはきた。しかも二曲もだ。
だがしかし、そこには本来婿候補を探すという目的があったはずだ。そのために参加したはずなのだ。
二曲ちゃんと踊ったとはいえ、友人(だと思う)と続けて二曲では、目的は少しも達成されていない。マーカスには、それを指摘できそうにないけれど。
「あ、ああ。見ていたよ。だが、他の方とは……」
「お父様! この後フェルナン様とロジアン様と約束をしているの。待たせるわけにはいかないわ」
被せるように話すジェシカに、反対できるはずもない。その背後には、不敵な笑みを浮かべたフェルナンがいるのだから。
「そ、そうだな。それは失礼だ」
「お父上。私がちゃんと見ておきますので、大丈夫ですよ」
ジェシカには聞こえぬようにそっと伝えてくるフェルナンに、マーカスはもはやお願いするしかなかった。
「よろしくお願いいたします」
「ええ。帰る時にはお声がけください。積もる話もあるでしょうから」
フェルナンは、ちらりとマーカスの背後に視線を向けた。その視線の先には、まだいろいろと聞き出したいと燃えるマーカスの友人たちが控えている。
マーカスが、自分とジェシカの関係をどう語るのか。
フェルナンは含みのある笑みを残して、ジェシカを連れ去っていった。