貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
※ ※ ※
夕飯と湯あみを済ませると、さすがに疲れていたジェシカはベッドにダイブした。枕に顔を押し付けて目を閉じると、浮かんでくるのはフェルナンと過ごした時間ばかり。
ランチを食べるまでは、何のことのない友人同士のお出かけだった。
きっかけはなんだっただろうか? サンドウィッチを頬張っていると、フェルナンが横から手を伸ばしてきて、顔にかかっていたジェシカの横髪をそっと避けて耳にかけてくれた。不意打ちのことに一瞬ドキリとしたジェシカだったが、そこはすぐに持ち直した。
「ジェシカ、これも美味しそうだぞ。食べてみるといい」
そう言って差し出されたのはジェシカが見たこともないもので、フルーツとクリームがたっぷりと挟まれたサンドウィッチだった。
「スイーツみたい!!」
甘いものが大好きなジェシカは、フェルナンが自分の口元に近付けてきたそれを、何の迷いもなくパクリと一口かじった。もちろんこの時点でフェルナンに食べさせてもらった……いや、恋人のように〝あーん〟とされていたなどとは意識していなかった。
「美味しい!!」
興奮するジェシカに、〝そんなに美味しいのか。どれ〟と返したフェルナンは、まるで見せつけるようにして彼女の食べかけのサンドウィッチを頬張った。
さすがのジェシカもハッとした。
弟妹となら、幼い頃のよくある光景だった。しかし大人になった今、相手が双子の妹達だったとしてもさすがにしない。それが家族以外の、しかも大人の男性が相手だということに、ジェシカの胸がドキリと跳ねた。
「フェ、フェルナン様!?」
「ん? 甘いサンドウィッチもいいな」
「そ、そうね……」
ジェシカが何かを意識したことを察知したフェルナンは、ここぞとばかりに攻撃を仕掛けた。
それは食後のこと。
「このまま少し、休憩しようか」
お腹が満たされた中、その意見にジェシカも賛成した。
「ジェシカ、ちょっといいか?」
自分がいいとも悪いとも答える前に、片づけを済ませたフェルナンは隣に座っていたジェシカの足に、自身の頭を乗せて寝転がってしまった。
「!?」
(一体、何が起きているの!?)
膝枕などという経験のないジェシカは、同志とはいえ、自分よりうんと年上の大人の男性であるフェルナンがとった突然の行動に動揺した。
「フェ、フェルナン様?」
「少しだけ、こうさせてくれないか」
ジェシカの胸は痛いほどドキドキしている。けれど、切なげに乞うように見つめられたら頷くしかできなかった。
(き、きっと、毎日のお仕事で疲れているのね)
騎士団長を務めるフェルナンだ。今は戦がないとはいえ、夜会の警備だけでなく先日のように各地へ手伝いにも出向いており、疲れもたまっているのだろうと納得した。
事情がわかれば、うるさかった鼓動も次第に落ち着いていく。
(この真っ黒な短髪は、なんだかかたそうだわ)
平常心を取りもどせば、そこは自由奔放なジェシカのこと。フェルナンが自分に背を向けているのをいいことに、あろうことか断りもなく彼の髪に触れた。それはすぐに大胆になり、幼い頃オリヴァーにしていたようにガッツリと頭を撫でていた。
(思ったよりも柔らかいわ)
黒という色のイメージには似つかず、フェルナンの髪は意外と柔らかく、撫でている方もなんだか心地よくなってくる。
頃合いを見計らったフェルナンは、突然ぐるりと体の向きを変えた。驚いたジェシカはとっさに手を止めて、大きく目を見開いた。
「ご、ごめんなさい。休めなかったかしら」
(勝手に髪に触るだなんて……)
しゅんとしかけたジェシカの手を、フェルナンが掴んだ。
「すごく、心地よかった」
再び頭に手を導かれたということは、もっとしろということなのだろうか。
優しげでトロリととろけたようなフェルナンの表情に、何とも言えない愛しさが湧き起こったジェシカは、ドキドキしながら彼の髪に触れ続けた。
夕飯と湯あみを済ませると、さすがに疲れていたジェシカはベッドにダイブした。枕に顔を押し付けて目を閉じると、浮かんでくるのはフェルナンと過ごした時間ばかり。
ランチを食べるまでは、何のことのない友人同士のお出かけだった。
きっかけはなんだっただろうか? サンドウィッチを頬張っていると、フェルナンが横から手を伸ばしてきて、顔にかかっていたジェシカの横髪をそっと避けて耳にかけてくれた。不意打ちのことに一瞬ドキリとしたジェシカだったが、そこはすぐに持ち直した。
「ジェシカ、これも美味しそうだぞ。食べてみるといい」
そう言って差し出されたのはジェシカが見たこともないもので、フルーツとクリームがたっぷりと挟まれたサンドウィッチだった。
「スイーツみたい!!」
甘いものが大好きなジェシカは、フェルナンが自分の口元に近付けてきたそれを、何の迷いもなくパクリと一口かじった。もちろんこの時点でフェルナンに食べさせてもらった……いや、恋人のように〝あーん〟とされていたなどとは意識していなかった。
「美味しい!!」
興奮するジェシカに、〝そんなに美味しいのか。どれ〟と返したフェルナンは、まるで見せつけるようにして彼女の食べかけのサンドウィッチを頬張った。
さすがのジェシカもハッとした。
弟妹となら、幼い頃のよくある光景だった。しかし大人になった今、相手が双子の妹達だったとしてもさすがにしない。それが家族以外の、しかも大人の男性が相手だということに、ジェシカの胸がドキリと跳ねた。
「フェ、フェルナン様!?」
「ん? 甘いサンドウィッチもいいな」
「そ、そうね……」
ジェシカが何かを意識したことを察知したフェルナンは、ここぞとばかりに攻撃を仕掛けた。
それは食後のこと。
「このまま少し、休憩しようか」
お腹が満たされた中、その意見にジェシカも賛成した。
「ジェシカ、ちょっといいか?」
自分がいいとも悪いとも答える前に、片づけを済ませたフェルナンは隣に座っていたジェシカの足に、自身の頭を乗せて寝転がってしまった。
「!?」
(一体、何が起きているの!?)
膝枕などという経験のないジェシカは、同志とはいえ、自分よりうんと年上の大人の男性であるフェルナンがとった突然の行動に動揺した。
「フェ、フェルナン様?」
「少しだけ、こうさせてくれないか」
ジェシカの胸は痛いほどドキドキしている。けれど、切なげに乞うように見つめられたら頷くしかできなかった。
(き、きっと、毎日のお仕事で疲れているのね)
騎士団長を務めるフェルナンだ。今は戦がないとはいえ、夜会の警備だけでなく先日のように各地へ手伝いにも出向いており、疲れもたまっているのだろうと納得した。
事情がわかれば、うるさかった鼓動も次第に落ち着いていく。
(この真っ黒な短髪は、なんだかかたそうだわ)
平常心を取りもどせば、そこは自由奔放なジェシカのこと。フェルナンが自分に背を向けているのをいいことに、あろうことか断りもなく彼の髪に触れた。それはすぐに大胆になり、幼い頃オリヴァーにしていたようにガッツリと頭を撫でていた。
(思ったよりも柔らかいわ)
黒という色のイメージには似つかず、フェルナンの髪は意外と柔らかく、撫でている方もなんだか心地よくなってくる。
頃合いを見計らったフェルナンは、突然ぐるりと体の向きを変えた。驚いたジェシカはとっさに手を止めて、大きく目を見開いた。
「ご、ごめんなさい。休めなかったかしら」
(勝手に髪に触るだなんて……)
しゅんとしかけたジェシカの手を、フェルナンが掴んだ。
「すごく、心地よかった」
再び頭に手を導かれたということは、もっとしろということなのだろうか。
優しげでトロリととろけたようなフェルナンの表情に、何とも言えない愛しさが湧き起こったジェシカは、ドキドキしながら彼の髪に触れ続けた。