貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
目を閉じてしまったフェルナンを見て、ジェシカはさらに彼の頭を撫でていく。そっと前髪に触れた時、額にうっすらと残る傷跡を見つけて思わず顔を近付けた。
(これは、戦の時のものかしら)
よく見れば、衣類から除く首元や腕に、小さな傷がいくつも見られる。おそらく、服の下にはもっとあるのだろう。
(フェルナン様は、この国のために体を張ってこられたのね)
そう思うと、そこには同志とは違う尊敬の念が沸き起こってきた。
フェルナンを間近で見つめながら髪撫でていると、しばらくして彼は突然目を開けた。そのまま何を思ったのか、その大きくて逞しい腕を伸ばしてジェシカに巻き付いてしまった。
「!?」
(ど、どういうことかしら?)
突然のことにパニックを起こしたジェシカだったが、フェルナンの方は何も言ってこない。
(ど、どうしたらいいの?)
とりあえず、ジェシカの手はフェルナンの頭を撫で続けるのみ。
そのままジェシカの腹に顔を埋めていたフェルナンは、その後あろうことかぐりぐりと額を擦り付け出した。それにはさすがにジェシカの手も動きを止めた。
「ああ、悪い。寝ぼけてしまったかな」
オリヴァーがいたら、すかさず温度のない冷たい口調で言ったはずだ。〝嘘をつくな〟と。ついでに、底冷えするような鋭い視線付きで。
「ね、眠っていらしたの?」
「ああ。ジェシカは柔らかくてよい香りがするから、つい寝てしまったようだ」
「そ、そう」
それなら仕方がないわと、よくわからないまま無理やり納得したジェシカ。それからは抱き着かれたままだったものの額を擦り付けてくるわけもなく、ひとまず安心して再びフェルナンの髪に触れていた。
(足が痺れてしまいそうだわ。でも……こうしていると、なんだか温かくてホッとする)
幼い頃、母のいない寂しさを紛らすためにオリヴァーや双子達とくっついて過ごした日々を、ジェシカは思い出していた。
(あの時も、お互いの温かさに無性に安心していたものだわ)
比べる対象としてはあまりにもかけ離れている。けれど、自身の足に感じる重みと温かさに、ジェシカは幸せな気分になっていた。
ほどなくして目を開けたフェルナンは、特に何もなかったかのように平然としていた。
「ありがとう、ジェシカ。心地よかった」
そして、なんとも甘いを顔を見せて、さらに仕掛けてきた。
「お返しだ」
と言うが否やジェシカをぐっと抱き寄せると、自身の足を枕にするようにジェシカを導いた。
「フェ、フェルナン様!?」
ジェシカは、再びうるさくなった胸元をぐっと抑えた。名前を呼んではみたものの、フェルナンからの返答はない。
それどころか、さっきまでジェシカがしていたように、フェルナンが髪を撫で始めた。それが思いの外心地よくて、次第に緊張がほぐれていったジェシカは、無防備にも目を閉じてしまった。
このままでは本当に寝てしまいそうだと思い始めた頃、フェルナンが口を開いた。
「ジェシカの髪は、すごく奇麗だな。いつまでも触っていられる」
「え?」
思わず目を開けたジェシカの視界に飛び込んできたのは、自分の髪を一筋掬ったフェルナンが、目を閉じてそっと口付けするところだった。
「なっ!!」
ちらりと向けられた流し目は、それはもう大人の色気満載で、恥ずかしくて直視できないほどだった。
(か、顔が、熱いわ)
ジェシカは真っ赤になった頬に手を当てて、必死に落ち着こうとしていた。
フェルナンは、恥ずかしがるジェシカを見て満足していた。
やっと自分が異性だということに気付いてくれたと。
(これは、戦の時のものかしら)
よく見れば、衣類から除く首元や腕に、小さな傷がいくつも見られる。おそらく、服の下にはもっとあるのだろう。
(フェルナン様は、この国のために体を張ってこられたのね)
そう思うと、そこには同志とは違う尊敬の念が沸き起こってきた。
フェルナンを間近で見つめながら髪撫でていると、しばらくして彼は突然目を開けた。そのまま何を思ったのか、その大きくて逞しい腕を伸ばしてジェシカに巻き付いてしまった。
「!?」
(ど、どういうことかしら?)
突然のことにパニックを起こしたジェシカだったが、フェルナンの方は何も言ってこない。
(ど、どうしたらいいの?)
とりあえず、ジェシカの手はフェルナンの頭を撫で続けるのみ。
そのままジェシカの腹に顔を埋めていたフェルナンは、その後あろうことかぐりぐりと額を擦り付け出した。それにはさすがにジェシカの手も動きを止めた。
「ああ、悪い。寝ぼけてしまったかな」
オリヴァーがいたら、すかさず温度のない冷たい口調で言ったはずだ。〝嘘をつくな〟と。ついでに、底冷えするような鋭い視線付きで。
「ね、眠っていらしたの?」
「ああ。ジェシカは柔らかくてよい香りがするから、つい寝てしまったようだ」
「そ、そう」
それなら仕方がないわと、よくわからないまま無理やり納得したジェシカ。それからは抱き着かれたままだったものの額を擦り付けてくるわけもなく、ひとまず安心して再びフェルナンの髪に触れていた。
(足が痺れてしまいそうだわ。でも……こうしていると、なんだか温かくてホッとする)
幼い頃、母のいない寂しさを紛らすためにオリヴァーや双子達とくっついて過ごした日々を、ジェシカは思い出していた。
(あの時も、お互いの温かさに無性に安心していたものだわ)
比べる対象としてはあまりにもかけ離れている。けれど、自身の足に感じる重みと温かさに、ジェシカは幸せな気分になっていた。
ほどなくして目を開けたフェルナンは、特に何もなかったかのように平然としていた。
「ありがとう、ジェシカ。心地よかった」
そして、なんとも甘いを顔を見せて、さらに仕掛けてきた。
「お返しだ」
と言うが否やジェシカをぐっと抱き寄せると、自身の足を枕にするようにジェシカを導いた。
「フェ、フェルナン様!?」
ジェシカは、再びうるさくなった胸元をぐっと抑えた。名前を呼んではみたものの、フェルナンからの返答はない。
それどころか、さっきまでジェシカがしていたように、フェルナンが髪を撫で始めた。それが思いの外心地よくて、次第に緊張がほぐれていったジェシカは、無防備にも目を閉じてしまった。
このままでは本当に寝てしまいそうだと思い始めた頃、フェルナンが口を開いた。
「ジェシカの髪は、すごく奇麗だな。いつまでも触っていられる」
「え?」
思わず目を開けたジェシカの視界に飛び込んできたのは、自分の髪を一筋掬ったフェルナンが、目を閉じてそっと口付けするところだった。
「なっ!!」
ちらりと向けられた流し目は、それはもう大人の色気満載で、恥ずかしくて直視できないほどだった。
(か、顔が、熱いわ)
ジェシカは真っ赤になった頬に手を当てて、必死に落ち着こうとしていた。
フェルナンは、恥ずかしがるジェシカを見て満足していた。
やっと自分が異性だということに気付いてくれたと。