貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
※ ※ ※

「もう少し、一緒にいたい」

マーカスらへの挨拶を終えた後、そう切なげにフェルナンに囁かれたジェシカは、一も二もなく頷いてそのまま王都へ向かった。最初に訪れたのは、数日前フェルナンがプロポーズしてくれた噴水の広場だった。ベンチに並んで座り、水遊びする小鳥を見つめていると、その長閑な様子にジェシカの浮ついていた心も次第に落ち着いていった。

「こうやって、ずっとずっと穏やかに暮らしていきたいわ」

思わず漏らしたジェシカの言葉に、フェルナンが頷いて返す。

「そうだな。だが、それだけで終わらないのがジェシカだ。これからも一緒に釣りに行きたいし、ピクニックにも行きたい。田舎でこっそり木登りも……」
「もう!!」

茶化し始めたフェルナンを、ジェシカが遮る。

「ははは。それに……そうだな。一緒に馬にも乗りたい」
「馬? 私、大丈夫かしら?」

乗馬が苦手なジェシカは、わずかに表情を強張らせた。それをなだめるように、フェルナンは彼女を抱き寄せて優しく髪をなでる。

「ああ。私が付いている。馬に乗れれば一緒に遠乗りもできる。まだ行ったことのない土地にも行けるな」
「ふふふ。やりたいことがいっぱいね。時間が足りるかしら?」
「そうだな。だから、少しでも早く一緒になりたい」

熱に浮かされたような掠れた声になったフェルナンに、ジェシカはぶるりと体を震わせた。

「ジェシカ、手を」

さっとジェシカの手を掬い取ったフェルナンは、いつの間にか持っていた指輪を、そっとジェシカの指にはめた。

「よく似合っている」
「あ、ありがとう」

豪華すぎる指輪に気後れしそうになっていたジェシカだったが、拒みはしなかった。
この人が自分がいいと言ってくれて、私に似合うと用意してくれた指輪だ。拒めるわけがない。

その後、カフェで過ごしていたところを、まさかフェルナンの部下に見られているとは思わなかったが、二人は終始仲睦まじく幸せな時間を過ごしていた。
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