貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
見せつけることもお仕事です
「ジェシカ、おいで」
差し出されたフェルナンの手に、ジェシカは自身の手を添えて馬車を降りた。
今宵、正式に婚約して以来、初めてそろって夜会に出席していた。
城で開かれたこの夜会は、王宮に勤める薬師が新薬を開発し、その功績をたたえて開かれたものだ。というのは表の理由で、その裏にはあの戦の鬼フェルナン・タウンゼンド騎士団長の婚約を公の場で見せつけようという隠されたテーマがあった。
騎士として数々の功績をおさめてきたフェルナンのこと。当然国王からの信頼は厚い。常日頃から早く嫁を見つけろと、国王本人からせっつかれていたほどだ。
ジェシカと逢瀬を重ねていた頃、フェルナンは明確に二人の付き合いを公言してはいなかった。とはいえ、隠していたわけでもない。
それがプリンの一件で団員達が二人の関係を正確に知るところとなり、相手の令嬢を絶対に逃してはならないと腹黒カーティスがすぐさま陛下に密告した。その結果がこの夜会だ。結婚するまで気を抜かず、二人を盛り立てようと。
〝こんな大げさなことは……〟と遠慮していた薬師も、裏の事情を知らせれば〝でしたら、ぜひご協力しましょう〟と全面協力を申し出ていた。
今夜のジェシカは、ボルドーの細身のドレスを纏っている。ジェシカの年齢を考えればもっと若さを重視した華やかな色合いをとも思ったフェルナンだったが、彼女の一言にノックアウトされていた。
「大人なフェルナン様に、少しでも釣り合う大人の女性になりたいの」
ドレスを贈りたいと連れていった店内で、潤んだ瞳で上目遣いに訴えられたら、受け入れざるを得なかった。
(反則だ、こんなの……)
ジェシカのあまりの可愛さにフェルナンがしばらく固まっていたことに彼女は気付いていなかったが、店主はそんな二人の様子を微笑ましく眺めていた。
ラメの入った生地にしてレースをふんだんに使えば十分に若さも醸し出せる、という店主の勧めに従って作らせてみたのが今夜のドレスだ。いつもはどこか少女らしいところのあるジェシカだったが、今夜は美しさが際立ち、どこか妖艶にも見える。必然的に、男たちの視線を集めてしまうだろう。
そんな魅力的なジェシカの首元には、先日フェルナンが贈ったネックレスが光っている。彼の瞳の色の宝石が、そのトップで主張しているものだ。加えて、そのほっそりとした指には婚約指輪が鎮座している。
フェルナンはほかの男達に対して優越感に浸ると同時に、美しいジェシカに対してますます想いを募らせていた。
社交界トップクラスの美しいジェシカと、婿候補筆頭の騎士団長フェルナン・タウンゼンドの組み合わせが注目を集めてしまうのは必然なことだ。二人の姿を見た男達は、〝やはりそうだったのか……〟と肩を落とした。
フェルナン狙いの女性達(母親込み)は、ジェシカの令嬢らしからぬ姿を知っているだけに、〝なんであんな娘が……〟と悔しげに地団太を踏んだ。
そんな周囲のうるさい雑音と視線は、全てフェルナンがその視線でシャットアウトしていく。もちろん、警備に配置された騎士達もそれはもう鋭い視線で威嚇した。その異様な雰囲気を肌で感じた貴族たちは、直接二人に声をかけられずにいた。
差し出されたフェルナンの手に、ジェシカは自身の手を添えて馬車を降りた。
今宵、正式に婚約して以来、初めてそろって夜会に出席していた。
城で開かれたこの夜会は、王宮に勤める薬師が新薬を開発し、その功績をたたえて開かれたものだ。というのは表の理由で、その裏にはあの戦の鬼フェルナン・タウンゼンド騎士団長の婚約を公の場で見せつけようという隠されたテーマがあった。
騎士として数々の功績をおさめてきたフェルナンのこと。当然国王からの信頼は厚い。常日頃から早く嫁を見つけろと、国王本人からせっつかれていたほどだ。
ジェシカと逢瀬を重ねていた頃、フェルナンは明確に二人の付き合いを公言してはいなかった。とはいえ、隠していたわけでもない。
それがプリンの一件で団員達が二人の関係を正確に知るところとなり、相手の令嬢を絶対に逃してはならないと腹黒カーティスがすぐさま陛下に密告した。その結果がこの夜会だ。結婚するまで気を抜かず、二人を盛り立てようと。
〝こんな大げさなことは……〟と遠慮していた薬師も、裏の事情を知らせれば〝でしたら、ぜひご協力しましょう〟と全面協力を申し出ていた。
今夜のジェシカは、ボルドーの細身のドレスを纏っている。ジェシカの年齢を考えればもっと若さを重視した華やかな色合いをとも思ったフェルナンだったが、彼女の一言にノックアウトされていた。
「大人なフェルナン様に、少しでも釣り合う大人の女性になりたいの」
ドレスを贈りたいと連れていった店内で、潤んだ瞳で上目遣いに訴えられたら、受け入れざるを得なかった。
(反則だ、こんなの……)
ジェシカのあまりの可愛さにフェルナンがしばらく固まっていたことに彼女は気付いていなかったが、店主はそんな二人の様子を微笑ましく眺めていた。
ラメの入った生地にしてレースをふんだんに使えば十分に若さも醸し出せる、という店主の勧めに従って作らせてみたのが今夜のドレスだ。いつもはどこか少女らしいところのあるジェシカだったが、今夜は美しさが際立ち、どこか妖艶にも見える。必然的に、男たちの視線を集めてしまうだろう。
そんな魅力的なジェシカの首元には、先日フェルナンが贈ったネックレスが光っている。彼の瞳の色の宝石が、そのトップで主張しているものだ。加えて、そのほっそりとした指には婚約指輪が鎮座している。
フェルナンはほかの男達に対して優越感に浸ると同時に、美しいジェシカに対してますます想いを募らせていた。
社交界トップクラスの美しいジェシカと、婿候補筆頭の騎士団長フェルナン・タウンゼンドの組み合わせが注目を集めてしまうのは必然なことだ。二人の姿を見た男達は、〝やはりそうだったのか……〟と肩を落とした。
フェルナン狙いの女性達(母親込み)は、ジェシカの令嬢らしからぬ姿を知っているだけに、〝なんであんな娘が……〟と悔しげに地団太を踏んだ。
そんな周囲のうるさい雑音と視線は、全てフェルナンがその視線でシャットアウトしていく。もちろん、警備に配置された騎士達もそれはもう鋭い視線で威嚇した。その異様な雰囲気を肌で感じた貴族たちは、直接二人に声をかけられずにいた。