貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
「あら、ジェシカさんじゃないの」
そこへ突然割り込んできた声に、ジェシカはハッとした。このいたたまれない状況下、ジェシカにとってその声は救いの女神のように思えた。
「ロジアン夫人ですって!?」
バーバラは、ロジアンの姿を認めた途端に盛大に顔を歪めた。
「まあまあ、フェルナン様にジェシカさん。あなた方、婚約したんですって?」
「ええ。夫人にはジェシカ共々ずいぶんお世話になっているのに、ご報告が遅くなってすみません」
すかさず笑みを浮かべたフェルナンが、それまでの怒りが嘘のように実に申し訳なさそうな声音を出す姿に、再び周りは驚いていた。
「本当よ。一番に聞きたかったわ。でも、嬉しいことだわ。二人とも、おめでとう」
ロジアンは、まるで少女のように口を尖らせて不満を言ったものの、ふんわりとほほ笑んで二人の婚約を心の底から祝福した。その様子を、周囲は凝視している。
「ちょっ、ちょっと失礼します。ロジアン夫人、初めまして。私、ランズダウン・グレイスと申します」
「あら、侯爵家の方ね。私に何か用かしら?」
「ええ。私、この二人の婚約を聞いて驚いておりますの。フェルナン様に、こんな〝残念〟だなんて言われている方はふさわしくありませんわ」
〝そうじゃありませんこと?〟と、その若さからか、グレイスは相手がロジアンであろうとも怯むことなく訴える。
「私はそうは思わないわよ」
グレイスを忌々しげに睨むフェルナンに対して、ロジアンはいつも通りに見えるが、彼女と付き合いの長い人にすればずいぶんとわざとらしくも見える。
「ロジアン夫人も、この方のお噂を聞いたことがありますでしょう? 夜会に出席して、殿方に見向きもしないで食べてばかりいたとか」
グレイスに改めて指摘されて、自分がいかに非常識だったかを痛感したジェシカは、今後は気を付けなければと心中で誓った。
(でないと、フェルナン様にまで恥をかかせてしまうわ)
「あら? 出されている料理を食べてはいけないなんてルールがあったかしら」
首を傾げるロジアンは、意見を求めるように興味津々に見ていた周りの人々をぐるりと見渡した。もちろん、見られた側は反論できそうにもない。なんせ彼女は、とにかく厳しいことで有名な、王家のマナーの教育係だったのだから。ここで彼女を否定しようものならば、王家をも否定するようなもの。
「もったいないじゃないの」
「も、もったい、ない……」
ロジアンの予想外の一言に、グレイスが眉間にしわを寄せた。この人は何を言っているのかと。
グレイスとて、ロジアンのことは知っている。それだけに、まさか夜会で大量の食事をとる行為を肯定するとは思ってもみなかったのだ。
加えて、〝もったいない〟と言ってのけたロジアンを、信じられないものを見たとでもいうように目を見開いていた。
(もったいないって、どういう意味だったかしら……?)
そんな言葉とは無縁に育ってきたグレイスだったが、もちろん言葉の意味を知らないわけではない。現状についていけないだけだ。
「そうですわよ。食べ物を粗末にするなんて……」
グレイスにとって食べ物など、自分の好みや気分次第で残すなんて当たり前だ。自分の知っている貴族にとっては、食事を残すなど気にも留めないような些細なこと。庶民と違って、そうしても平気な財力があるのだから。
そこへ突然割り込んできた声に、ジェシカはハッとした。このいたたまれない状況下、ジェシカにとってその声は救いの女神のように思えた。
「ロジアン夫人ですって!?」
バーバラは、ロジアンの姿を認めた途端に盛大に顔を歪めた。
「まあまあ、フェルナン様にジェシカさん。あなた方、婚約したんですって?」
「ええ。夫人にはジェシカ共々ずいぶんお世話になっているのに、ご報告が遅くなってすみません」
すかさず笑みを浮かべたフェルナンが、それまでの怒りが嘘のように実に申し訳なさそうな声音を出す姿に、再び周りは驚いていた。
「本当よ。一番に聞きたかったわ。でも、嬉しいことだわ。二人とも、おめでとう」
ロジアンは、まるで少女のように口を尖らせて不満を言ったものの、ふんわりとほほ笑んで二人の婚約を心の底から祝福した。その様子を、周囲は凝視している。
「ちょっ、ちょっと失礼します。ロジアン夫人、初めまして。私、ランズダウン・グレイスと申します」
「あら、侯爵家の方ね。私に何か用かしら?」
「ええ。私、この二人の婚約を聞いて驚いておりますの。フェルナン様に、こんな〝残念〟だなんて言われている方はふさわしくありませんわ」
〝そうじゃありませんこと?〟と、その若さからか、グレイスは相手がロジアンであろうとも怯むことなく訴える。
「私はそうは思わないわよ」
グレイスを忌々しげに睨むフェルナンに対して、ロジアンはいつも通りに見えるが、彼女と付き合いの長い人にすればずいぶんとわざとらしくも見える。
「ロジアン夫人も、この方のお噂を聞いたことがありますでしょう? 夜会に出席して、殿方に見向きもしないで食べてばかりいたとか」
グレイスに改めて指摘されて、自分がいかに非常識だったかを痛感したジェシカは、今後は気を付けなければと心中で誓った。
(でないと、フェルナン様にまで恥をかかせてしまうわ)
「あら? 出されている料理を食べてはいけないなんてルールがあったかしら」
首を傾げるロジアンは、意見を求めるように興味津々に見ていた周りの人々をぐるりと見渡した。もちろん、見られた側は反論できそうにもない。なんせ彼女は、とにかく厳しいことで有名な、王家のマナーの教育係だったのだから。ここで彼女を否定しようものならば、王家をも否定するようなもの。
「もったいないじゃないの」
「も、もったい、ない……」
ロジアンの予想外の一言に、グレイスが眉間にしわを寄せた。この人は何を言っているのかと。
グレイスとて、ロジアンのことは知っている。それだけに、まさか夜会で大量の食事をとる行為を肯定するとは思ってもみなかったのだ。
加えて、〝もったいない〟と言ってのけたロジアンを、信じられないものを見たとでもいうように目を見開いていた。
(もったいないって、どういう意味だったかしら……?)
そんな言葉とは無縁に育ってきたグレイスだったが、もちろん言葉の意味を知らないわけではない。現状についていけないだけだ。
「そうですわよ。食べ物を粗末にするなんて……」
グレイスにとって食べ物など、自分の好みや気分次第で残すなんて当たり前だ。自分の知っている貴族にとっては、食事を残すなど気にも留めないような些細なこと。庶民と違って、そうしても平気な財力があるのだから。