貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
「ここで、第二の柱です」

(そうよ。もう一本あったわ)

「さっきも言いましたが、ここは王都からほど近いため、日帰り旅行には最適なんです。そこで、観光地化できないかと考えました」

観光地と聞いて、ジェシカは首をひねった。ここには観光と呼べるようなものなどなさそうだと。
川で魚釣りはできるけれど、ちゃんと整備された安全な釣り堀が他にあるし、花を植えたところでそれを見るためだけにここまで来ようとは思わないだろう。
オリヴァーは一体何を提案するのかと、ジェシカは不安に思いながらも期待を込めた目で見つめた。

「少し奥まった場所なんですか、ミッドロージアン領は温泉が出る可能性が高いんです」

温泉そのものは知っているジェシカだったが、自身が経験したことはない。
以前、ここからずっと遠い土地で温泉が出たのだが、王都から行くにも片道二日ほどかかってしまうため、気軽に楽しめないと貴族の間で不満に思う声が上がっていた。

「温泉か。それが本当ならば、間違いなく外から人が集まるだろう。だが、掘るにしてもかなりの費用がかかる。可能性がどれほどのものかわからないが、ともすると大金をドブに捨てることになりかねない」
「可能性は、かなり高いと思います」

ここにきて、マーカスが口を開いた。

「どうしてそう言い切れるのでしょうか?」
「実は、オリヴァーが独自でこの土地の研究をしていまして、もしかしたらと話してきたんです。そこで私の知人でそういうことを専門としている者と共に、何度か調査を行いました。その結果、確率は90パーセント以上。掘るべきだと診断されております。ただ、本当に実行するのであれば、再度別の専門家の診断を仰ぐべきだと思いますが」
「なるほど。それならば地質調査と絡めてしまえば、国の補助が降りる可能性がある。国王陛下に話を通しておこう」

(こ、国王陛下!? オリヴァーもすごいけれど、国王陛下と話ができるフェルナン様がすごすぎる)
思わず尊敬のまなざしで見つめていると、フェルナンもチラッと笑みを返してくれ、ジェシカの胸はいろいろな意味で高鳴るばかりだ。

「まとめると、温泉で人を集めて、訪れた客に地産の製品を買ってもらう。これが僕の考えです」

(オリヴァー……。あの小さかった弟が、こんなに立派になったなんて。きっと天国のお母様も喜んでいるはずだわ)

フェルナンはすべての説明を聞き終えると、オリヴァーの用意した資料をもう一度すみずみまで読み込みながら、ところどころさらに詳しい説明を求めた。それにオリヴァーもマーカスも不信感や疑念を抱かせることなど一切なく、堂々と答えていく。その姿に、ふたりが力を合わせたら本当に実現できそうだと、ジェシカは確信していた。

「すごいな。収支の見込みも、なかなか緻密だ。私はここに人の手配と軌道に乗るまでの資金援助をしよう」
「ありがとうございます」

フェルナンに認められたオリヴァーが、彼にしては珍しく年相応の笑顔を見せた。
(堂々としているように見えたけれど、オリヴァーだって不安だったたのかもしれないわね)
うんうんと、一人頷くジェシカだったが、弟の次の一言にやはりただ者じゃないと思わされた。
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