貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情
※ ※ ※
「まあ、ジェシカさん。なんて綺麗なのかしら」
結婚式当日。ジェシカの元を訪れたロジアンは、いつかのようにジェシカに近づいたり離れたりしながら、彼女の美しさを絶賛した。
この日、ジェシカが身にまとったウエディングドレスは、袖のない首元が開いたドレスだった。その代わりに、手には豪華なレースのロンググローブがはめられている。
短くしようか迷った裾は、結局そうはしなかった。確かに、若さや元気さを感じるデザインはジェシカも好きだったが、大人なフェルナンと並ぶとうしても幼さを強調したように思えてしまったのだ。
彼女にとってそれが一番大きな理由だったのは間違いないが、ドレスの打ち合わせを終えるたびにフェルナンがいつも以上に甘えてくることにいろいろと察したのもある。口にはしないが、彼はまだ不安や不満を感じていたのだろうと。
「こんなに綺麗なあなたを見たら、団長さんがすぐさま隠してしまいそうね」
ロジアンのからかいに、ジェシカは苦笑するしかなかった。
――三年後――
「ジェシカ、準備はいいか?」
「ちょっと待ってください。アレクの帽子がなかったわ」
ジェシカの言葉を受けて、すぐさま侍女が用意をして手渡す。
「ありがとう。フェルナン様、これで大丈夫です」
ジェシカとフェルナンの間には、長男アレクシスが誕生した。二歳になったアレクシスは、少しずつ言葉を覚え、動きも活発になってきた。
ジェシカはこれまでアレクの世話を乳母や侍女らに任せっきりにするのではなく、積極的に関わってきた。幼い弟妹らの面倒を見てきたジェシカにはお手のものだったが、それでも昼夜関係なく泣く赤子の頃は疲労を濃くしていた。
フェルナンは初めての育児に奔走する妻を労わろうと、今日から数日間、ジェシカの実家へ訪問することに決めていた。
「実家へ行くのは、いつぶりかしら?」
この国では、嫁いだ女性が自分の実家へ行くことはあまり良いとはされていない。それに倣ったジェシカは、フェルナンがいくら〝気にせず遊びに行けばいい〟と言っても、頑なに行こうとはしなかった。それは、自分の言動で騎士団長である夫に恥をかかせるわけにはいかないと思っていたのが大きい。
「アレクのお披露目は、父上たちがこちらへ来てくれたしなあ」
結婚して一年目は、領地改革の手伝いを頼まれて数回故郷を訪れたジェシカだったが、それもある程度の目途が立つとパタリと行かなくなった。やはり、仕事以外の理由で行くわけにはいかないというのが理由だ。加えて妊娠がわかったことも大きい。
「手紙のやりとりはしてますけど、実際に行くのは二年半ぶりぐらいですね」
改革の手助けをしているフェルナンはもう少し頻繁に行き来していたが、彼の手もすでに離れている今、フェルナンにとっても久方ぶりの訪問になる。
「ずいぶん様変わりしているのかしら?」
話には聞いているものの、実際にはどうなのかジェシカは知らない。
貧しかった故郷が繁栄することは嬉しい。けれど、その風景があまりにも変わってしまっていたら自分はどう思うのだろうかと、少々不安でもあった。
「まあ、ジェシカさん。なんて綺麗なのかしら」
結婚式当日。ジェシカの元を訪れたロジアンは、いつかのようにジェシカに近づいたり離れたりしながら、彼女の美しさを絶賛した。
この日、ジェシカが身にまとったウエディングドレスは、袖のない首元が開いたドレスだった。その代わりに、手には豪華なレースのロンググローブがはめられている。
短くしようか迷った裾は、結局そうはしなかった。確かに、若さや元気さを感じるデザインはジェシカも好きだったが、大人なフェルナンと並ぶとうしても幼さを強調したように思えてしまったのだ。
彼女にとってそれが一番大きな理由だったのは間違いないが、ドレスの打ち合わせを終えるたびにフェルナンがいつも以上に甘えてくることにいろいろと察したのもある。口にはしないが、彼はまだ不安や不満を感じていたのだろうと。
「こんなに綺麗なあなたを見たら、団長さんがすぐさま隠してしまいそうね」
ロジアンのからかいに、ジェシカは苦笑するしかなかった。
――三年後――
「ジェシカ、準備はいいか?」
「ちょっと待ってください。アレクの帽子がなかったわ」
ジェシカの言葉を受けて、すぐさま侍女が用意をして手渡す。
「ありがとう。フェルナン様、これで大丈夫です」
ジェシカとフェルナンの間には、長男アレクシスが誕生した。二歳になったアレクシスは、少しずつ言葉を覚え、動きも活発になってきた。
ジェシカはこれまでアレクの世話を乳母や侍女らに任せっきりにするのではなく、積極的に関わってきた。幼い弟妹らの面倒を見てきたジェシカにはお手のものだったが、それでも昼夜関係なく泣く赤子の頃は疲労を濃くしていた。
フェルナンは初めての育児に奔走する妻を労わろうと、今日から数日間、ジェシカの実家へ訪問することに決めていた。
「実家へ行くのは、いつぶりかしら?」
この国では、嫁いだ女性が自分の実家へ行くことはあまり良いとはされていない。それに倣ったジェシカは、フェルナンがいくら〝気にせず遊びに行けばいい〟と言っても、頑なに行こうとはしなかった。それは、自分の言動で騎士団長である夫に恥をかかせるわけにはいかないと思っていたのが大きい。
「アレクのお披露目は、父上たちがこちらへ来てくれたしなあ」
結婚して一年目は、領地改革の手伝いを頼まれて数回故郷を訪れたジェシカだったが、それもある程度の目途が立つとパタリと行かなくなった。やはり、仕事以外の理由で行くわけにはいかないというのが理由だ。加えて妊娠がわかったことも大きい。
「手紙のやりとりはしてますけど、実際に行くのは二年半ぶりぐらいですね」
改革の手助けをしているフェルナンはもう少し頻繁に行き来していたが、彼の手もすでに離れている今、フェルナンにとっても久方ぶりの訪問になる。
「ずいぶん様変わりしているのかしら?」
話には聞いているものの、実際にはどうなのかジェシカは知らない。
貧しかった故郷が繁栄することは嬉しい。けれど、その風景があまりにも変わってしまっていたら自分はどう思うのだろうかと、少々不安でもあった。