関係に名前を付けたがらない私たち
 けれど何事もなく、あっさり7月が終わり、8月を迎えることになった。

「ノストラダムス出てこいや!!」

 散々人を恐怖のどん底に陥れやがって。人生一度しかない貴重な19歳の4月から7月を無駄にした。

 私の怒りは相当なもので既に他界しているノストラダムスに「会ったら絶対にボコるからな」と空を見上げて何度も口にした。それでも気が収まらなかった。

「お前、馬鹿じゃねえの」

 ベランダから空に向かって暴言を吐く私を見て、耕平が心底呆れていた。

「だって! こんなに人をビビらせてさ、この怒りどこに向ければいいのっ」

「けどあいぼん、侮んなよ。旧暦だと7月は現代の8月だからな」

―――きゅうれき……?

 旧暦。そんなものがこの世に存在するなんて知りもしなかった。怒りは一気に引き、私の顔に陰りが広がった。

「……それって。8月もやばいってこと?」

「冗談だよ」

「だって旧暦って今言ったじゃん。どこ情報?」

「だから冗談だって」

「耕平の馬鹿!!」

 結局私は1999年の8月も無駄にした。


 それからしばらく経って、携帯電話の新機種が発売されることになった。

ヒョウ柄モデルのそれがどうしても欲しくて、耕平とお揃いで機種変することに。
 購入後は「0」を押して発信すると即繋がるように、お互いに設定した。

 耕平も新機種が嬉しかったらしい。「0は特別な数字だから、生涯あいぼんの数字にしとくよ」とか言っていて「0が特別なの? なんで?」と不思議そうに首をかしげる私に、耕平は説明した。

「0ってどの数字をかけても0じゃん。なんか特別っぽくね?」

「ふうん」

 割とどうでも良くって、すぐさま0の神秘に興味をなくした私に耕平は「おいっ」と笑っていた。
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