関係に名前を付けたがらない私たち
「まさか、あいぼんと耕平が付き合うとか思ってもなかったよ」

 久しぶりにいつものバーに飲みに行くとみんなから口々に同じ台詞を言われた。

 お決まりのチェリーコークを口にする私に「結婚とか考えてんの?」とめぐちんから訊かれ「さすがに結婚はまだ考えてないよ。だって私、この前やっと二十歳になったばっかりだよ」

「まあねえ。でもちいちゃん、うちらと同い年だけど子供いるじゃん?」

 ちいちゃんもギャル仲間だったのだけど、いわゆるデキ婚で、つい先日女の子を出産した。

「私、結婚はいいから子供が欲しいなあ」

 チョコレートを口に放りこんだめぐちんはバサバサの黒いまつ毛を指先で整えながら言う。

「子供かあ。それもまだピンとこないな」

 結婚とか子供とか、その時の私には遠い遠い未来の話のように思えてならなかった。

 でも結婚するなら耕平がいいな、という漠然とした思いは持ち合わせていた。

 数日後、テレビを観ていた耕平に「ねえ、結婚したい?」と訊ねてみた。

「結婚? なんで?」

「別に深い意味はないけど、耕平は私と結婚したい?」

「うーん。あんま考えたことなかったなー。でも、まだあいぼん二十歳だしもう少し遊びたいんじゃないの?」

 遊ぶ? と、小首を傾げてしまった。
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