関係に名前を付けたがらない私たち
 まさかそんな言葉が耕平から返ってくるとは思ってもみなかった。呆気にとられてしまい、頭の中で言葉の意味をうまく処理出来なかった。

「俺以外にもさ、いい男と出会うチャンスだってあるわけじゃん?」

「それ、どういう意味? 私が耕平以外の男と遊んでもいいって意味で言ってんの?」

「そういう意味じゃないよ」

「だからどういう意味? それってさ、耕平も遊びたいってこと?」

「違うよ。なんかうまく言えないけどさ。俺はあいぼんが好きだよ。でも俺には経済力みたいなのないじゃん。あいぼんを夜働かせてんのだって、なんか悪いなって思うけど現実問題、働いてもらわないと俺ら生活出来ねえじゃん?」

「別に耕平から働かせられてるとか思ったことないよ。というか出会った頃から私、夜してたんだし」

「まあ、そうなんだけど。でもまあ、今の俺は四の五の言えないな。甲斐性なしだし。あいぼんが他に好きな男が出来たって言うなら、それも仕方ないのかなって思うし」

 まだ二十歳だった私は「好き」という気持ちさえあれば、生活くらい何とかなると本気で思っていた。
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