関係に名前を付けたがらない私たち
 そうだよねぇ、と顔を曇らせるめぐちんは、気の毒な私にかける言葉を模索しているようだった。
 バイト帰りにクラブにやって来たものの全く楽しめず、何人かの男の子に声を掛けられたりもしたけれど、きゃっきゃと騒ぐような気にもならなかった。

 結局、耕平は嫌がる私をうまいこと宥め、丸め込み、送迎の仕事を始めてしまった。

 その頃から、私たちの関係はボタンを掛け違えたようなすれ違いが多くなった。耕平が何を考えているのか全然わからない。

 なんでこんなことになったのかなぁ……。

 一緒にいるだけで、ただ楽しかったのに、最近はケンカしようにも時間が合わない。
それより何よりセックスレスという由々しき事態に陥っていた。
もうキスすらまともにしていない。

 私のバイトは何時から何時まで、休みは主に日祝とはっきり決まっているのに、耕平のところはそういうのが杜撰だった。
 杜撰というよりは、どこまで仕事でどこまでが遊びなのか、その辺の線引きがどうなっているのかさっぱりわからない。
とにかく家にいつ戻って来るのか、どこで何をしているのか見当がつかないのだ。
でも羽振りは良くて、生活そのものは潤っていた。耕平が稼いでいることはありがたいけれど、私はいつも寂しかった。

 寂しくなって耕平に電話すると、声が聞こえないほど騒々しい場所にいて「今どこにいるの」と訊けば「社長の知り合いのスナックに挨拶に連れて来られた」とか「デリの子がキャバクラに移動になったから見学に連れて来た」とか言ったりする。
ひどい時は電話にも出ないし、折り返しもない。私はどんどん拗ねてしまい、そして虚しくなっていた。
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