関係に名前を付けたがらない私たち
 社長に誘われても断ればいいのに。どうしていつもいつも誘われるがままに同行するの。

まあ、私たちホステスもいわゆる営業というやつで、同業であるホストクラブに「今度お店に来てねー」と挨拶代わりに飲みに行かねばならない日もある。
 そうすると向こうがお礼を兼ねて、ラウンジに飲みに来てくれたりもして、持ちつ持たれつな関係を作ったり……

(けれど耕平の仕事ってただの送迎だよね?)

 なんで頻繁に飲みに行ったり、デリ嬢をキャバクラの見学に連れて行ったり、そこまで耕平がやらないといけないのだろう。

 何だか凄くモヤモヤしたし、ムカついた。

 でも耕平が帰宅する時間が定まっていなくて、私が家を出ようとするときに耕平が帰って来たり、私が帰宅した頃には既に寝ていたり、そんなこんなの日々が続き、話し合いどころかケンカすら出来ないまま、日が過ぎていった。
とはいっても耕平の気持ちが冷めたという感じはなく、私に対してはそれなりに優しいから尚さら意味が分からない。

 もういいや。

 拗ねた気持ちを宿していた私は、バイト帰りにめぐちんといつものクラブに行って、ストレス発散とばかりにチェリーコークをがぶ飲みした。
 見知った男の子たちと一緒にゲームをして、負けたらテキーラをショットで飲むみたいな、肝臓に悪そうな遊びを楽しんだ。

「あいぼん、大丈夫?」

 飲み仲間の男の子から背中をさすられていた私は、顔を便器の中に突っ込んで、げえげえ吐いていた。
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