関係に名前を付けたがらない私たち
「……もしかして知り合い?」

「知り合いっていうか、ここで会う奴らって何となく皆友達っぽい感じじゃん。素性までは深くは知らないけど耕平と普通に話したことあるし、他の店で一緒に飲んだこともあるよ」

「ああ、確かに皆友達っぽいよね。耕平とは……、まあ続いてるっていうか、なんだろうな。うまくは……いってない、かな。かといってすっごく険悪でもないし。なんかよくわかんないや」

 へえ、と頬杖をついた優希は「ざーんねん」と軽い口調で言った。

「何が残念?」

「あいぼんがもう耕平と別れてたら口説こうかなって思ってたのに」

「なあんだ。そういうこと」

 ふむふむと頷いた私は、にやっと目を細めて「口説いてみる?」と挑発的なことでも言ってみた。

 深く考えず、お酒の席での軽いノリ、のつもりだった。けれど、私はまんまと優希に口説かれてしまい、呆気なく籠絡されてしまったのだ、その日のうちに。

 バーのトイレで交わした、優希の少し強引なキスは信じられないくらいにうまかった。
比較するのはナンセンスだと思いはしたけれど、耕平とは比べ物にならないほど、私を蕩けさせた。
多分、背徳感みたいなものもあったから尚更、刺激的だったのかもしれない。

 ラブホテルに入ってうろうろと部屋やバスルームを覗く私を可笑しそうにベッドの上で眺めていた優希は「ラブホ、久しぶりなの?」と訊いてきた。
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