関係に名前を付けたがらない私たち
「久しぶりっていうか、ラブホってあんまり来たことないんだよね」

「へえ? ああ、今までの彼氏たち部屋持ちだったわけね」

「そうなの。だから数えるほどしか来たことないの。わっ、ここのお風呂、なんか光るよ」

 泡泡のバスタブに七色の光が煌めき、微妙に下品なそれに笑ってしまった。

 背後に立った優希から抱きすくめられ「一緒に入ろっか」と囁かれた。さすが6才も年上だ、余裕が感じられる。しかもこの人、なんだかやけに女慣れしてるっぽい。

 美容師は昼間のホストと誰かが言っていたけれど、実際そういうものなのかと思うほど、優希は手慣れた様子で、背後から私の耳朶を甘噛みし、カットソーの中にするすると手を忍ばせて来た。

「ちょっと、お風呂に入るか入らないかの前に、この手はエロ過ぎでしょ」

「そう? じゃあ一緒に入るか、このまま俺の好きにさせるかどっちか選んでいいよ」

 なんというか。言うことまでサラッとし過ぎていて、只者ではないぞと思いはしたけれど、まだまだ頭が弱かった私は、思慮の欠片もなかったのだろう。

 どっちも優希にとって好都合な条件でしかないのに、私は真剣に自分にとってどちらがいいかを考えていた。アホだ、アホ過ぎる。

「はい、タイムオーバー」

 え、え、と狼狽える私を危なげなく抱き上げて、ベッドに運んだ優希は、あっさり私を組み敷いた。
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