関係に名前を付けたがらない私たち
 必死にパラパラの振り付けを覚えたり、何人の男から声をかけられるかを競い、友達とカクテルを賭けてみたり、「もう2日も寝てないんだけどー」と寝てない自慢をしてみたり。

 耕平こと、畑田 耕平に出会ったのはブリーチの繰り返しで髪がボロボロになり、イメチェンを兼ねてボブにした時だった。

 友達と待ち合わせなんてしなくても、適当にバーやクラブに行けば誰かがいた。エロ要素なしのラウンジに勤務していた私は仕事を終えた深夜1時過ぎ、よく足を運んでいたバーを訪れた。

 バーのスタッフも客もみんな顔見知り。部活やサークルの延長みたいな雰囲気だった。

「お疲れー」

「あいぼん、チェリーコークでいいの?」

「ああ、うん。そんな感じで」

 言いながら、カウンター席に腰かけると「あいぼん、髪切ってる!」「何気に似合ってるし」と、顔見知りの男の子や女の子たちがグラスを片手にわらわらと集まって来る。

「色抜き過ぎて髪ボロボロになってさあ。美容師から“もうこれ切るしかないね”とか言われて30センチくらい切ったよ」

「結構ばっさりいったねー。でも飽きたらエクステもあるしね」

「まあねー」

 そんな会話をしつつ、チェリーコークを口にする。
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