関係に名前を付けたがらない私たち
「優希はさ、私のこと好き?」

「当たり前だろ。じゃなかったら俺と付き合ってとか言わないよ」

「そっか。そうですか、そうですよね」

「はい、そうですよ」

 そう言って、シーツに私を押し倒して、組み敷く彼はやっぱりエロかった。そして所有痕を私の身体に刻みたがる。

「見えないとこにしてね」

 わかってる。そう言って、足と足の間に顔を埋めた優希は、私の太ももに口付けた。

 そう言えば耕平ってキスマーク付けたりしなかったな―――
 ぼんやり思ったけれど、そのまま悪戯な舌先が、私の気持ちいいところを舐め上げて、ふわりと腰が浮く。淫靡な水音を響かせて、身悶えるうちにそんな思いは霧散していった。

 6月末の月曜と火曜、連休が欲しいとラウンジのマネージャーに告げると、難なく休みをもらえた。週末じゃないし、店としても無駄に女の子を出勤させるよりは休んでもらえる方が良いのだろう。経費的な観点で。

「彼氏と旅行でもいくの?」
「ええ、まあ」

 マネージャーが言う彼氏とは、当然、耕平のことなので少しだけ罪悪感がチクチク痛かった。でもまあ、私を放置する耕平が悪いんだ……と、思いつつ、とあるお願いのために、バックルームで化粧直しをしているめぐちんに話しかけた。

「……というわけなんだけど。万が一のことがあったらいけないからさ、その」

「あいぼん、何言ってんの。そんなの私と旅行って言えばいいじゃん。私だっていっぱいあいぼんの名前使ってるんだし。困った時はお互い様よ!」

 なんだろう。困った時はお互い様、その使い方はあってるはずだけど、動機が不純過ぎて、私たちは大笑いした。
 ケラケラ笑って「持つべきものは友よねー」「ねー」と友情に乾杯した。お客さんのキープしていたウィスキーの水割りで。
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