関係に名前を付けたがらない私たち
「―――というわけなんだけど、優希、どう思う?」

 旅行先で私は思い切って打ち明けた。何を、それは事の顛末だ。
 本当は旅行前に何もかも優希に伝えたかったのだけど、もしかしたら耕平は、私を手のひらで転がすふりをして、実は、あいぼん殺害計画を企てていたりして……そう思うと優希に連絡をとったり、会うのが怖かった。
 だから自分なりに旅行までは逢瀬の回数を控えていた。

 けれど耕平に不穏な空気は全くなく、むしろ旅行前に「これ少ないけど」とお小遣いまで手渡された。
 耕平の頭の中がどういう構造になっているのか、もうわけがわからなさ過ぎて「ありがとう。お土産買って来るね!」と答えてしまった私も、そうとうどうかしていると思う。

「……なんで早く言わないんだよ。旅行なんかしてる場合じゃなくない?」

 恐らくこれがとっても正しいであろう反応を見せてくれた優希に安堵した。

「ああ、優希は至って普通だ。普通だから安心したよ」

「何言ってんの」

 本気で私を心配してくれている様子の優希に「だって旅行前にお小遣いくれるんだよ? 恐怖でしょ。こんなのおかしくない? 普通じゃないよね?」と訴えた。

 優希もゾッとしたのか「マジで、なにそれ」と呟いたまま思案げな顔をしている。

「機嫌悪い様子とかないの?」

「全然ない。むしろ私を気遣ってくれるっていうか、頭がおかしいのかなあの人」

 とりあえず、ああでもないこうでもないと話してはみたものの、真相は耕平にしかわからないねという結論に至った。何このシンプルな結論。ちょっと笑ってしまった。
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