関係に名前を付けたがらない私たち
 耕平と破局しても、優希との関係は至って順調だった。

 耕平の部屋に2年ほど転がり込んでいた私は、破局後、一度実家に戻り、すぐさまワンルームマンションを借りることにした。

 両親との関係が悪いとか、決してそういうわけではないけれど、水商売をしている娘というのは、世間的にどうも体裁が悪いらしい。
 特にちょっと前までのガングロブームで、私は国籍不明なほど肌を焼き、どこの種族かというくらいじゃらじゃらアクセサリーを身に着けていた。
髪に至っては両親の遺伝子的にあり得ないような金髪にしていたりして、そんな娘が、少し古臭い日本家屋を出入りしていれば、ご近所さんたちから色眼鏡で見られるのは言わずもがなの話だ。

 最近は前に比べれば、かなり人類に馴染む程度に変化したはずなのに、それでも両親は「早く部屋を借りなさい」と私を追い出した。

 まあ、別にいいんだけど。

 ワンルームマンションは耕平が借りていた部屋より広くて、収納も多い。トイレバスは別だし、エアコンも完備されていて、かなり快適だ。

 店休日の前日になると、優希が部屋にやって来て、私たちはイチャイチャしながら過ごすのがお決まりになっている。
 時々ふと耕平を思い出す日はあったけど、優希と過ごす時間に上書きされ、耕平との思い出は過去に埋没されてゆく。
< 43 / 67 >

この作品をシェア

pagetop