関係に名前を付けたがらない私たち
 耕平とは全然違う。
 私を放流した耕平から、こんな台詞を言われたことはなかった。

 多分私、ちょっと嫉妬されるくらいが嬉しいらしい。めんどくさい女だ。

「―――優希以外に触れさせないよ。髪も、身体も」

 そう言って優希に口付ける。すると優希は「ああー」と軽く唸って何やら思案げな顔をする。

「なになに、どうしたの」

「あいぼん、具合悪いのに、すげえ襲いたいんだけど」

 真っ直ぐなまでに欲情され、私の心が甘く疼く。だから具合なら大したことないんだって。
 言葉の代わりに、私が優希をベッドに押し倒した。

 いつもは優希から好き勝手に気持ち良くされるのだけど、たまには私から襲ってみようと思い至り、彼の身体に跨って、唇を塞いだ。

 私は、優希が気持ちよくなった時に吐き出す少し掠れた声が、好きだ。眉を寄せて、息を詰めるような、熱がこもった甘い声。
 耳から首へと舌を這わせると、苦しげに顔をしかめて「あい」と私を呼ぶ。あいぼんじゃなくって、あい。
 セックスの時、最近の優希は私の名前を呼び捨てる。それがちょっと特別な気がして、私は好き。

 私の愛撫に呼吸を乱し、次第に昂ってきた優希は「もう無理」と私のうなじに腕を回して、くるりと反転させた。

「ああっ、今日は私からしたかったのに」

 抗議の声は唇に塞がれて「今度はあいを気持ちよくしてあげる」と優希の指先がパジャマのボタンを器用に弾いてゆく。
 晒された胸元に優希の唇が触れ、強く吸いつかれる。「そんなとこにキスマークつけたら見えるじゃん」

「ねぇ、見えるかもね」

 悪戯っ子みたいな目をした、独占欲旺盛な優希にゾクゾクした。
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