関係に名前を付けたがらない私たち
―――やばい。まじで死ぬかも。

 生まれて初めて死の恐怖を感じた私は一気に青ざめた。

 そこにふらりと店に入って来た、Tシャツにハーフパンツ、腕にはGショック、キャップを被った小麦色の肌をした男の子。

 服装や健康的な肌の色から一見サーファーっぽく見えた。

 ノストラダムスネタは瞬く間に霧散し、みんなの視線はその男の子に向いていた。

「お、コウヘイじゃん。こんな時間に珍しいね」

 仲間内の男の子が親し気に声をかけた。

 明日休みだから、みたいなことを言ったコウヘイは「俺、ジーマね」とスタッフの男の子にドリンクを注文する。

 飲み口に添えられたレモンをぎゅっと瓶の中に押し込んだコウヘイは「お疲れー」とその場にいたみんなと適当に乾杯をする。

 私は初対面だったけれど、他のみんなとは顔見知りのようだ。人好きする笑顔とあっけらかんとした雰囲気が人を惹き付けるらしい。

 残り半分になっていた私のチェリーコークのグラスにもカツンと軽快に瓶が弾かれ「あ、可愛い子いるじゃん」と挨拶代わりの軽い口調で言われた。
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