関係に名前を付けたがらない私たち
 この頃、日本全国でオレオレ詐欺や振り込め詐欺、架空請求詐欺といった、今までにはない手口の犯罪が世間を賑わせていた。

 実際、私の携帯に知らない番号からかかってきて「有料コンテンツのお支払いが滞っています」などと身に覚えのないことを言われ、一瞬「え、そうなの?」と引っかかりそうになったこともあった。

 すぐにハッとしたけれど、高齢者や情報弱者と呼ばれる人たちの被害が相次いでいる時期だった。

 耕平が、まさかそんなことに関与していたなんて―――全くと言っていいほど想像がつかない。

 私はひたすら困惑していた。
 だってあの耕平が? 何かの間違いなんじゃ……信じられない気持ちに押し潰されそうだった。
 けど、私はどれだけ耕平を知っていたというのだろう。同棲していた頃だって仕事内容はおろか、耕平の気持ちですらわからなかった。

 知ったような気になっていただけで、私は何も知らなかったのだ。

 詐欺集団に幹部だの部下だの、そんな会社みたいなシステムがあるとは知りもしなかった私は、すぐさまホステス時代のマネージャーに連絡を取った。

 既にお水業界でも騒ぎになっていた。
 耕平だけではなく、耕平が店長をしていた風俗店の従業員やオーナーまでも関与していたとかで、背後には暴力団との繋がりがあり、警察があちこちに聞き込みに行っているようだった。

 当然、テレビでも報じられ、既に逮捕された連中は犯行を認めているらしく、ワイドショーでは被害にあった方が録音したという犯行音声も公開されていた。
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