関係に名前を付けたがらない私たち
「ある程度のことは把握してます。虚偽は罪に問われますから、事実を話してください」

「……はい」

「畑田とは随分親しかったようですね。通話履歴、メールの送受信も確認済みです」

「親しいというか……」

「親しくなかったのですか?」

 「0」を押して発信すると、私の携帯に繋がるようになっていたと刑事さんは言った。
 確かに、親しそうだ。それは、そう思われても仕方がない。

「念の為に確認しますが―――、畑田とは、現在は恋人関係ではありませんね?」

 圧がかかった言い方に身がすくみそうになった。
 私の存在をかなり怪しんでいるような、何かを知っていると思われているような、そんな口ぶりだった。

 でも本当に、私は何も知らなかった。

「恋人関係ではありません。確かに以前はお付き合いしていましたけど、19から21までの2年間です。もう何年も前の話です。最近は……何なんでしょうね。私たちの関係。でも男とか女とかそんなんじゃありません。調べればわかると思いますけど」

「では単なる友人関係ですか?」

「そうですね、単なる友人です」

 そう答えたけれど、私たちの関係をどう表現すればいいのか、わからなかった。
 単なる友人に「俺はずっとあいぼんが好きだよ」と言うのだろうか。その言葉を聞いて安心するのが、友人関係なのだろうか。
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