関係に名前を付けたがらない私たち
「仕事もう長いの?」

「んー、高校んときからバイトしてたからそこそこかな」

「ふうん」

 そこで少しだけ会話が途切れたせいか、不意にノストラダムスを思い出してしまった。

―――やばい、もうすぐ死ぬかも。

 忘れていた不安がじわりと近付いて来る。

「ねえねえ」

 フローリングに置かれた四角い小さなテーブルに頬杖をついて、耕平の背に話しかけた。

「耕平が来る前までノストラダムスの話をしてたんだ」

「ノストラダムス? ああ、恐怖の大魔神がどうちゃらこうちゃらのアレ?」

「恐怖の大王じゃないの? 大魔神と大王ってどう違うの?」

「大魔神のが強そうじゃね?」

「確かに。大魔神って神だもんね」

「で、大魔神がどうしたの」

「あの予言、信じる?」

 じゅっとフライパンから気持ちのいい音が聞こえる。

「いやあ、別に。でももしそうなったらなったで仕方ないよね」

 手先を器用に動かして、形を整える耕平は全くビビってる様子がない。

「怖くない?」

「怖いっていうかあんま考えたことない。てか、あいぼん怖いの?」

「うん。怖い。だって死ぬとかさ、意味わかんなくない?」
< 8 / 67 >

この作品をシェア

pagetop