関係に名前を付けたがらない私たち
 フライパンからまな板へと返されたふわふわのだし巻きが目に映る。包丁を握った耕平は「けど怖がったところでどうなるもんでもないじゃん」

「まあ、そうなんだけどさあ。あんな話聞くんじゃなかった」

 あはは、と笑った耕平は「まあ、食え」と私に熱々のだし巻きを差し出した。

「美味しいっ」

「旨いだろー」

 自信たっぷりに目を細める耕平。もぐもぐと咀嚼する私を見て「ノストラダムスばりに俺が予言してもいい?」と言った。

 予言?

「なんの予言?」

「この後、あいぼんと俺、キスすると思うよ」

 照れるでもなく、さらりとそんなことを言われた私は「ぷっ」と吹き出した。

「はあ? 何言ってんの」

 と言った直後、耕平の顔が近付き、臆すことなくキスされた。

「こんなの予言でも何でもないじゃん」

「でも当たったろ?」

 そして、耕平から更なる予言を受けた。

 俺とエッチすることになるよ、と。
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