朝倉家の双子、恋をします!〜めぐり来る季節をあなたと〜
「ね、ちょっと……」

歩く速度が速い。

「真っ! 」

「……なんだ?」

「あの……セントラルパーク」

「え」

「セントラルパークに行ってみたいの。
すぐそこじゃない?
……見てみたかったの……ライトアップ」

「……」

私達は二人でどこかに出掛けるような関係ではない。

過去にそんなことをしたのは、あの偽装恋人期間だけだった。

でも、ここに来るといつも憧れていたのだ。あのキラキラ光るセントラルパークを歩いて、テレビ塔を眺めてみたいって…

ところが、聞こえなかったのか真はスタスタと歩いていく。

「真っ! ちょっと速いよ……
どうしたの? 何をそんなに急いでるの?」

「……」

怒ってる?
仕事上がりの疲れている時にライトアップなんて言ったから?

「……この時間にそんな薄着で、風邪引くだろう? のんびり歩くな。」

え? 私を気遣ってくれてたの?
たしかに寒いけど。
わかりにくいなぁ……

再び歩き始めた真が、もう一度止まった。
おもむろに自分がしているマフラーを外し、私の首にぐるぐると巻きつける。

「巻いとけ」

「……」

どうしよう……
ちょっと泣きそうだ。
真の不器用な優しさが、私の心を揺さぶる。

ずっと昔に見た光景。
マフラーを忘れた泉に、自分のマフラーを外してぐるぐる巻きにしていた。
大切そうに、愛おしそうに……。

「……ありがと……」

窮屈なくらいに巻き付けられて、下も向けない。
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